<塚原夫妻は、千恵子さんが昭和48年から、光男さんが51年から、朝日生命クラブで女子選手の育成に参加。59年から全日本選手権で団体、個人とも八連勝させるなど確固たる実績を築いてきたが、生来の強気の性格からか、「ズケズケいいすぎる」という周囲の声もあった>
また、当時騒動について聞かれた千恵子夫人は、<意図的に審判を選んだわけではない。子どもを巻き込むなんて、教育者失格です>と話し、夫の塚原副会長も<どうせうちの選手だけになると思ってるんでしょう。学閥の恨みもあるんじゃないですか>と主張するなど強気だったと報じている。
一方、Aコーチは<日本の女子が国際的に弱くなったのは、塚原さん以外の指導者がやる気をなくしたため。年間二百日の強化合宿なんて、だれが参加できますか。その方法でなければ強化できないという塚原さんのやり方は、五輪代表を朝日生命クラブの六人で固めたいということでしょう><以前から皆、陰で塚原さんの悪口をいっていた。今回のように、いざやるぞ、となったらいっきにやってしまわないと、一人ずつ呼ばれて切り崩しにあう>と主張していた。
当時、騒動を取材した記者によると「ボイコット騒動はマスコミで大きく取り上げられたが、すぐに収束してしまった」という。
そして今回のパワハラ騒動である。
塚原夫妻が31日マスコミ各社に送ったプレスリリースには事の経緯とともに、
<第三者委員会とは別に、体操の関係者たちが私たちに対して厳しい目を向けており、かつての選手たちからも大変厳しいご意見をいただいております。これは、全て私たちの今までの行いに原因があると思っております>
と記されていた。
今回の騒動を受け、ロサンゼルス五輪体操男子の鉄棒金メダリストの森末慎二さんは30日のスポーツ報知で宮川選手にエールを送った。ロンドン五輪体操女子代表の田中理恵さんも自身のインスタグラムで支援を表明。宮川選手への応援は言葉になっているものだけではない。白井健三選手や早坂尚人選手ら多くの選手がSNS上で宮川選手を支持する投稿に「いいね」をするなど、無言の支援が広がっている。
オリンピックまで後2年。塚原夫妻は今回の騒動が選手に与える影響を危惧しているのだろう。リリースの最後はこう締めくくられていた。
「2020年に東京オリンピックを控え、様々なスポーツ団体の問題が連日取り上げられておりますが、選手たちは自分自身と戦い必死で頑張っております。そういった選手の期待や思いを私たちは一番に考えておりますので、何卒、選手たちやスポーツ界を応援していただければと思っております。私たちも、私たちの言動の影響力について改めて自覚し、考えを改め、2020年の東京オリンピックにおける日本選手の活躍を応援していきたいと考えております」
宮川選手が戦うのも自分自身だけだったはずなのだが――。
(AERA dot. 編集部・福井しほ)