シニアを主眼にしているわけではないが、近年、こうした人柄力の中身は経済学の一つの研究領域にもなっている。今年、『性格スキル』(祥伝社新書)を上梓した慶応義塾大学大学院の鶴光太郎教授が言う。

「テストでは測れない能力である非認知能力を『性格スキル』と名付け、それらが人生の成功にどう影響するかを研究するものです。もともと、心理学で研究されていましたが、1990年代後半から、アメリカの経済学者が着目するようになった分野です」

「ビッグ・ファイブ」と呼ばれる主な性格スキルは、心が開かれている性向を見る「開放性」、勤勉性を示す「真面目さ」、関心が外の人や物に向かっているかを見る「外向性」、相手のことを思いやれる「協調性」、不安やいらいらが少ない「精神的安定性」の五つだ。

「これまでの研究で、これらは仕事の成果や賃金など職業成果に影響を与えることがわかっています。仕事の業績でいえば、特に『真面目さ』との関係が強い」

 うれしいのは、その「真面目さ」と「精神的安定性」「協調性」は、年齢にかかわらず伸び続けることが研究成果としてわかっている点だ。

「性格スキルは大人になってからも十分に鍛えることが可能です。一番大切な『真面目さ』でいえば、その成長を支えているのは『人のために役に立ちたい』という動機です。それがあれば、苦労を乗り越えてチャレンジし続けられます」

 先の山田氏によると、AI(人工知能)時代を迎えて「性格スキル」的能力は、機械に対して人間の持つ力という側面で世界的に注目されているという。

「AIは論理的に複雑なことならなんでも処理できますが、状況に応じた機敏な対応はできないでしょう。対人関係をこなしたり、チームワークを発揮したりもできない。AIの世界が急速に広がるなか、コンピューター任せにできない面が注目されているのです」

 人柄重視は日本の専売特許かと思いきや、そうではなくなってきているのだ。

 ともあれ、性格スキルは鍛えることができ、しかも「真面目さ」が成長していくというのは朗報だろう。

 ならば、今すぐ始めようではないか。より良きシニアになるための「人柄力」磨きを。「三つ子の魂百まで」だから根本的な性格は変わらないだろうが、「人の役に立ちたい」という思いなどは心がけ次第だ。実は、経営の神様、故・松下幸之助も、人知れず「自分づくり」に励んでいた。それは左の囲み記事をご覧いただくとして、さて何から始めればよいのか。

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