「人間力のある人は、どこか人生を楽しもうとしているのがベースにありますね。もちろん苦しいこともあるのですが、どこかで『ケセラセラ、何とかなる』と思っている。眉間にシワも寄っていません」

 マネジメントに対する姿勢でも違いがわかる。

「同じ営業支店長でも、外でも活躍できる人は部下への仕事の振り方が違います。100%任せるのではなく、部下がどういうスキルを使って課題をこなしているのかをじっくり観察している。業務への興味・関心が深いんでしょうね。こういう人が、いざ出向してプレイングマネジャーになると、その観察力が生きてきます」

 出向・転籍先で長く働けているか──10年を契機に、そういう視点で出向者を分析したところ、同じ会社で働き続けている人は、ほぼ例外なく同社内で「人間的魅力がある」という評判を得ている人だった。

「コミュニケーション力が第一なんです。これまでの方向性が、間違っていないことを再確認できました」

 冒頭の「かわいい高齢者」と大日本住友製薬の「人間力」。「職場に受け入れられやすい要素」と「会社側が選ぶ基準」という違いはあるものの、どちらも仕事の専門スキルとは関係がない、いわゆる個々人の「人柄」に関することだ。

 日本企業は新卒一括採用の時から「人物重視」で社風に合った人材を好んで採り、昇進でも「人柄」のいい人が出世する傾向が強い。

 シニアになっても、いやシニアだからこそ、なおさらそれは変わらないようで、専門家にシニアの働き方について問うと、例外なくこのポイントが強調される。

 日本総合研究所理事の山田久氏は、有能で黙っていても外から仕事がやってくる一握りの人以外は、人柄や性格の良さが大きくものを言うという。

「再雇用では定年前と同じ職場で働くことが多いため、昔の肩書をふりかざして威張っている人は当然、職場で嫌がられます。年下の上司やかつての部下と良好な関係を保てる人柄のいい人が好まれるわけです。また、若い時は才能だけで仕事をこなせますが、今のようにチームで仕事をすることが増えると、対人能力の高い人でないと仕事が回らなくなります。シニアの場合は、なおさらです」

 すでに管理職から外れているから、権力や権限はない。そんな中、若手・中堅と一緒に、仲良くチームを組んで仕事に取り組むことが要求される。肩書に関係なく良好な人間関係を築ける、コミュニケーション力や協調性こそが大切というのだ。

 法政大学経営大学院の藤村博之教授は、「後輩から話しかけられやすい雰囲気を持つことが大切」とし、次のように言う。

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