運動で血圧や血糖値が下がることがあり、がんの予防につながることも期待されているが、それはあくまでも副次的な効果だという。
「生活習慣病の多くは食事や体質などが強く関係しているので、運動だけで何とかなるというものではありません。また、全員に同じように効果が出るものでもありません」(同)
こうした運動効果を誇張する傾向は、体を動かすことを強要する「スポハラ」や、運動をしない人やできない人に対しての蔑視につながるとして、「実は、そちらのほうが心配」と田中さんは言う。また、思ったような効果が表れないと「やってもムダ」という思考になり、逆に運動離れにつながることも危惧する。
実は、運動による健康効果についてはわかっていない部分も多い。「効果がある」とする研究のほとんどが、運動をしているAグループと、運動をしていないBグループを比較するなどして運動の効果を示したものだ。大江さんは説明する。
「結果に対する理由、すなわちなぜ運動は血圧を下げ、認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)を予防できるのか、遺伝子の発現や伝達物質の存在など、メカニズムについては現段階ではよくわかっていない。そこまで研究は進んでいないのです」
運動不足が招く生活習慣病なども問題だが、体を動かしてケガをしてしまえば元も子もない。(本誌・山内リカ)
※週刊朝日 2018年8月31日号