ウォーキングや筋トレなど、日常的に運動する習慣のあるシニアは多い。超高齢化社会を迎え、介護予防や血圧の値の改善など運動による健康増進効果が注目されているからだ。運動にはプラスの効果もあるが、やりすぎは禁物。ケガや突然死のリスクを高めることにもなりかねない。
【あなたはできる? ロコモ度チェックの「立ち上がりテスト」はこちら!】
神奈川県在住のマサオさん(61)は、10年ほど前に禁煙したが、食欲が増し、気がつくと標準体重より12キロオーバー。人間ドックで診察医から指摘を受けたこともあり、一念発起してウォーキングを始めた。
1日20~30分ほど歩くようになって半年。おなか周りの肉が減り、体が軽くなったマサオさんは、「よし、次はランニングにもチャレンジ!」と決意する。
だが、走り始めると胸の真ん中あたりに差し込むような痛みが現れた。家族の心配もあって病院を受診。医師から「狭心症の疑いがある。このまま運動を続けると命に関わる」と言われてしまった。
運動による血圧改善や認知症予防、介護予防など、さまざまな健康増進効果が注目され始めた昨今、多くのシニアがライフスタイルの中に運動を取り入れるようになった。厚生労働省の国民健康・栄養調査(平成28年)によると、現在、運動習慣のある人(1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している人)は、65歳以上の男性で46.5%、女性で38.0%。国民全体の平均(男性35.1%、女性27.4%)より高い。
シニアの運動について、循環器内科医でスポーツドクターの真鍋知宏さん(慶応義塾大学スポーツ医学研究センター)は“やりすぎ”に注意を促す。
「運動は健康にとってプラスの効果が期待できるのは確かですが、例えば、高齢になるほど動脈硬化によって血管のしなやかさが失われる。もともと血圧が高めなシニアにとっては、運動不足だけでなく、過度な運動も健康を損なうリスクになりかねません」
シニアの運動がもたらすリスクは、皮膚の劣化や貧血、骨折、足の変形など多岐に及ぶ。