中足骨短縮骨切り術。中足骨の一部を切除して指の関節を温存する(イラスト・今﨑和広)
中足骨短縮骨切り術。中足骨の一部を切除して指の関節を温存する(イラスト・今﨑和広)
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 関節リウマチに対して効果的な新薬が続々と投入され、病気の進行を薬で抑えられるようになってきた。同時に外科的治療も様変わりし、自分の関節を温存する手術が増え、手や足の手術が中心になってきた。

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 関節リウマチは自己免疫疾患と呼ばれる。これは、本来、細菌やウイルス、がんなど、人体にとっての異物を攻撃するはずの免疫が「暴走」し、自分の組織を攻撃してしまう病気である。

 免疫の暴走により、関節を覆う関節包という袋の内側に張られている滑膜という組織が増殖し、炎症を起こすことで周囲の骨や軟骨を破壊する。

 関節リウマチ治療の基本は、暴走した免疫を抑える薬剤を使い、発症前とほとんど変わらない生活が可能な状態(寛解)を達成することである。薬物治療では、まずメトトレキサート(MTX)という内服薬を使い、副作用などでMTXを十分に使えない、MTXでも寛解を達成できないとなると、生物学的製剤(点滴、皮下注射)やJAK阻害薬(内服薬)といった新しいタイプの薬剤を使う。

 東京大学病院整形外科教授の田中栄医師によると、正常な関節の目安は、痛みがない、ぐらついていない(安定している)、十分に動く、の3項目をすべて満たした状態である。

「MTXや生物学的製剤などを使った適切な治療を続けても、これらのうち1項目でも達成できなければ、外科的治療が選択肢に入ってきます」(田中医師)

■手・足の関節症状は早くから進行する

 関節リウマチの外科的治療は、大きく二つに分けられる。炎症の原因となっている滑膜を切除する手術と、炎症による関節の変形や不安定さを修復したり、破壊された関節を人工物に置き換えたりする手術だ。

 前者の滑膜切除術は、薬物治療により滑膜の炎症を抑えられるケースが増えてきたため、その手術件数は激減している。

 一方で、後者の関節本来の機能を取り戻す修復術や置換術の手術件数は、それほど減ってはおらず、新しい人工関節や術式の開発も続いている。ただし、部位によって、近年の手術件数の変化が大きく異なる。

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年月を経てひざや股関節を破壊