■メタボに認知症、減量にも有効
牛乳の健康効果はほかにも。2000年ぐらいから、牛乳がメタボのリスクを下げるという研究が、相次いで出てきたのだ。
例えば、アメリカでは45歳以上の女性約1万人を、牛乳・乳製品の摂取量によって四つのグループに分け、肥満との関係をみた。すると牛乳・乳製品を多くとるグループのほうがメタボ発症のリスクが下がっていた。
日本人を対象に調べた上西さんの研究でも、牛乳・乳製品をとっている女性は、体重が軽く、ウエストが細いという結果が出た。
肥満だけではない。牛乳には認知症の予防効果が期待できることも明らかに。わが国最大の疫学調査に、福岡県にある久山町の住人を観察した「久山町研究」がある。60歳以上の住民1千人を対象に、食生活と認知症発症との関連を調べたところ、「牛乳・乳製品の摂取量が多いほど認知症発症リスクが低くなる」ことがわかったのだ。
では、1日にどれくらい牛乳・乳製品をとればいいのか。上西さんは「日々の食事にプラス200cc」とアドバイスする。先の久山町研究では、最も多く飲んでいるグループは、男性が174グラム以上、女性は198グラム以上だった。脂肪が気になる人は、低脂肪、無脂肪のものを選び、医師が牛乳の摂取を止めている場合は、その指示に従うこと。
「牛乳はミネラルやたんぱく質が豊富なので、熱中症対策としての水分補給にも最適です」(同)
牛乳が苦手な人のなかには、飲むとおなかが緩くなるからという理由を挙げる人もいるだろう。これは、牛乳に含まれる乳糖を分解できない乳糖不耐症のため。そういう人は牛乳を温めて、ゆっくりと噛むようにとるとよいそうだ。
足立さんのお勧めは、市販のインスタントスープを作るときに、お湯の代わりに温めた牛乳を使うという方法。スムージーなども牛乳で割ると、飲むヨーグルトのような味わいになる。
記者も足立さんから聞いた料理に挑戦。作ったのはゆでたレバーを香味野菜としょうゆであえた料理、スープの牛乳割りなど(写真)。レバーは香味野菜を使うことでクセもなく、やみつきになりそうな味に。酒のさかなにもぴったり。スープは手軽に作れて、小腹が空いたときによさそうだ。
シニアを元気づける〝血管食材〟のレバーと牛乳。それ以外にも、さまざまな効用が期待できる最強食材といえそうだ。特にこれからの時期、熱中症や夏バテ防止、健康増進のために、積極的にとるようにしよう。(本誌・山内リカ)
※週刊朝日 2018年8月10日号