西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、近年変わる外国人選手獲得の事情と、日本選手の海外流出について語る。
* * *
昨年まで巨人に在籍したカージナルスのマイコラスが大リーグのオールスターに選ばれた。メディアの情報を見ると「日本でたくさんのことを学んだ。日本の時と同じように投げて、同じような結果を出せればいいと思っていた」と話していた。日本のプロ野球をリスペクトしてくれているようで、うれしいよね。
前半戦だけで10勝を挙げて、9回当たり与四球は1.4個。ナ・リーグ1、2位の数字の低さで、制球の良さは数値にも表れる。マイク・マシーニー監督も「彼はここ(メジャー)に戻ってきたことを誇りに思うべきだ」と話しているという。
日本経由で大リーグへ。過去にも多くのメジャーリーガーがそういった形で成功を収めているが、マイコラスのような選手が増えれば、メジャーを目指す若い選手の中に、米国でずっとプレーするよりも、日本で技術を磨いた上で、メジャーの舞台に挑戦していくという一つの流れができてくると思う。そうなれば、今度は日本球団のスカウティングの仕方も変わってくる。20代前半の才能ある若手と安く契約し、2軍などでじっくり教育しながら、一本立ちさせる。巨額の投資をする必要はないし、リスクも少なくなる。
何も大リーガー養成所であることを勧めているわけではない。しかし、外国人補強で資金力に劣る球団にとっては選択肢の一つとして持つべきだろう。7月10日のヤクルト戦で、育成から支配下選手契約して初登板初勝利を挙げた巨人のメルセデス。日本に来てからチェンジアップなどの変化球を学んだという。日本に来る選手も向上心を持って来るようになる。かつては「今年の外国人は当たり」「外れ」などとよく言われたが、今は「自分たちで育てる」時代に完全に入ったと言える。
西武監督時代の私も、編成には「支配下登録の枠が空いているのであれば、若くて将来性のある外国人選手がほしい」と要望していた。今は育成制度が完全に確立して、よりそういった形で外国人選手を獲得しやすくなっている。