「ヤマダ君、やってみろよ」
「僕はいいですよ」
「結構、高かったんだよ」
「じゃあ、ナカジマさんがやればいいじゃないですか」
「いや、私は話のネタに持ってきただけだからさ……」
結局、ふたりともふりかけなかった。
強烈なライトを浴びているナカジマさんの光沢を眺めながら、大センセイ、初心な青年のように逡巡していた先輩ハゲの心情を、ちょっぴり愛おしく思った。
オペラは聴くよりも、出る方がずっと楽しい。
※週刊朝日 2018年7月20日号
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「ヤマダ君、やってみろよ」
「僕はいいですよ」
「結構、高かったんだよ」
「じゃあ、ナカジマさんがやればいいじゃないですか」
「いや、私は話のネタに持ってきただけだからさ……」
結局、ふたりともふりかけなかった。
強烈なライトを浴びているナカジマさんの光沢を眺めながら、大センセイ、初心な青年のように逡巡していた先輩ハゲの心情を、ちょっぴり愛おしく思った。
オペラは聴くよりも、出る方がずっと楽しい。
※週刊朝日 2018年7月20日号
山田清機(やまだ・せいき)/ノンフィクション作家。1963年生まれ。早稲田大学卒業。鉄鋼メーカー、出版社勤務を経て独立。著書に『東京タクシードライバー』(第13回新潮ドキュメント賞候補)、『東京湾岸畸人伝』。SNSでは「売文で糊口をしのぐ大センセイ」と呼ばれている