ナカジマさんが手渡してくれたのは、深海ザメエキスとかコンドロイチンといったサプリメントが入っていそうな、円錐形のプラスチック容器であった。
「なんですかコレ。飲むんですか?」
「いや、ふりかけるんだよ」
ナカジマさんが、ちょっと恥ずかしそうに言った。
「どこに?」
「頭にさ」
容器の説明書きには、たしかに「本製品をふりかけるだけで、薄毛、円形脱毛症の悩み解消」とか書いてある。中身は青のりみたいな感じの粉である。
「風で飛んじゃったり、汗で流れたりしないんですかね。舞台の上でそうなったら悲惨ですよ」
「なんでも、静電気で頭に貼りつくらしいよ」
たしかに手軽かもしれないが、静電気でくっついているだけという不安定な感じが、どうも信用ならない。