西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、リプレー検証の誤審について自身の体験を踏まえながら問題点を語る。
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映像によるリプレー検証の末に判定をファウルから本塁打に変更し、試合後になって「あれは誤審でした」と審判員が認めて、ゴタゴタになった。6月22日のオリックス−ソフトバンク戦で起きたことである。ファウルと判定されたソフトバンク中村の打球がリプレー検証で決勝2ランに覆り、オリックスは3‐5で敗れた。どんな1プレーも重要なのだが、とりわけ勝敗に直結したプレーだから、オリックスからしたら、許せるはずがない。
公認野球規則は「審判員の判断に基づく裁定については、どのような提訴も許されない」と定めており、日本野球機構(NPB)は、試合続行はないとした。オリックスはパ・リーグのアグリーメント(申し合わせ事項)に「確証のある映像がない場合は審判団の判断とする」と規定していることを挙げ、続行試合を要望した。試合後に誤審を認めるほどあいまいな映像確認なのだから、映像により当初の裁定を覆す確証が得られない場合は、当初の裁定(ファウル)を採用するはずだ。裁定前に、規則運用違反だとした。
審判団が「あの判断は間違っていた」とする勇気は認める。だが、福良監督とともに試合後に映像を見返す作業は絶対にやってはいけないことだった。それでも起きたことは仕方がない。今回の一件で、映像によるリプレー検証は絶対ではないという考えをいま一度、共有するべきである。NPBも審判員も球団も、現場、選手も、である。
よくリプレー検証について、カメラの絶対数が少ないとか、メジャーリーグのように当該審判員ではなく、第三者の目が必要だ、との意見を目にする。だが、そこには膨大な費用が必要となる。現実的ではない。
今できることは、リプレー検証は100%ではないという点を共通理解として持つことである。