


根本から3メートルあたりから、無残にも崩れ落ちた銭湯の煙突は、震度6弱を観測した今回の大阪地震の威力を物語っていた。
銭湯の煙突が倒れたのは、大阪府枚方市の銭湯、「平和温泉」だ。京阪電車・香里園駅北西の住宅街に位置し、創業して40年を越す、地元の人にはなくてはならない銭湯だという。
近所の人は、今朝の地震をこう振り返る。
「朝8時前、地震で家の中は食器棚からか、皿やカップが落ちてきて、危ないと外へ飛び出した。すると、スローモーションのように、煙突がスライドし、崩れ落ちてきた。ボキッと折れたのではなくて、カクンという感じで、空中でタイムラグがあって、折れていきました」
その瞬間、地響きがし、周囲には砂煙が舞い、重油の匂いが充満したという。住民はこう続ける。
「煙突が崩れたとき、雷が10回ぐらい落ちたような地響きと振動でした。震度6にそれが加わって震度7にも、8にも感じるほどすごかった」
平和温泉に隣接するアパートに住んでいる男性はこう恐怖を語る。
「地震で家の中がグチャグチャになり、なんとか玄関にたどり着いた。だが、玄関のドアが開かない。子供と2人で必死にこじあけたら、目の前に崩れ落ちた煙突の破片がドーンと落ちていた。もう、信じがたい光景でした。周辺には、重油がいっぱい道に飛び散り、匂いがすごく、引火の危険性もあって、パニックでした」
平和温泉は40年以上も昔から地元に根付いてきた銭湯だけに、住民らのショックも大きかったようだ。
「先代さんがオープンさせて、今は2代目さん。日曜には恒例の朝風呂が好評で、くつろげる畳の間もあり、地域に親しまれてきた。2代目さんは『えらいことになって、申し訳ない』と顔がすすだらけになりながら、近所の人に頭を下げていた」
とりあえず、周囲に飛散した重油やがれきだけは片付けられた現場。電気系統がかなり危機的で銭湯の根幹部分である電気と重油の装置が壊れたというのだ。
「幸い、ケガされた方がいなかったのでよかった」と地元住民は語る。
銭湯は今後、どうなるのか。
玄関には<地震のため当分お休みさせて頂きます>という張り紙があった。
2代目に声をかけると「いや、とんでもないことになってしまった。取り込み中で申し訳ない」というばかり。1日も早い、復活を願いたい。(今西憲之)
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