万一、前述のように本田を始めとした一部選手たちからの解任要望があったとしても、協会がハリル側にも、そして公の場でも説明できるはずもない。しかもハリル前監督はワールドカップ予選での苦しい戦いを勝ち抜き、日本代表をロシアに導いた実績がある。会見で説明に困った田嶋会長が苦肉の策として「コミュニケーション不足」という言葉をひねり出した可能性もある。

 しかし、協会がハリル前監督と交わした契約には、協会は何の理由もなく契約を解除することができるという条項があったという。

「協会は理由がなくても契約を解除できたはず。会見での、ハリル氏のコミュニケーション能力を問題視する発言は不要だった。あの会見を一般の人が見れば、ハリル氏に落ち度があって、ある種『ハリル氏が契約を守らなかった、選手と対話をしなかった』と債務不履行での解除みたいな印象を与えたでしょう。契約上の必要性もないところで、人格否定みたいなことをされた。『契約を解除しました。苦渋の決断でそうしました』と説明するだけでよかった」(ハリル前代表の代理人弁護士)

 それゆえ、ハリル前監督は名誉回復を求めようとしているのという。

 ハリル前監督の代理人弁護士が先週、協会側に送った質問書でポイントだったのは次の2点だ。(1)解任の経緯に対する明確な説明、(2)理事会を通さず田嶋会長に実質一任された手順が正当なものかどうか。だが、協会側の代理人弁護士から17日未明にファックスで送られてきた回答は、納得できるものではなかった。

 ハリル前監督の代理人弁護士は、こう指摘する。

「こちらの細かい質問には答えていない。ただ、手続きがおかしいというメッセージは伝わっているみたいでして、『時間的猶予がまるでなく、緊急性が高かったということで、田嶋幸三会長が技術委員会等と協議し、決断』した。4月7日にパリで本人に告知後、同9日に日本で記者会見し、後任監督を西野朗氏にすると発表。その後、『4月12日の第5回理事会で報告の上、承認された』という経緯だったと協会は主張しています。つまり、技術委員会等には監督解任を事前に相談したが、理事会を開いて承認を取ったのは事後だったのです」

 だが、不可解なことに日本サッカー協会のホームページで4月12日の決議事項を確認すると、代表監督の交代は明記されていなかった。代理人からこうした指摘があったからなのか、きのう17日に開かれた第6回理事会での決議事項の一つに、以下のような記述が加えてあった。

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