妻:「絶対大丈夫よ!」と言えるほどに、私を強くしてくれたのも親方だと思う。昔の私は、決して明るい性格じゃなくて、人見知りもするし、常にコンプレックスを抱えている人間でした。それを親方は「なんでそんな小さいことで悩んでるの」「そんな考え方じゃ、うまくいかないよ」などと常に励ましてくれていました。
夫:術後に拒絶反応が出る可能性もあると言われたけど、1年後の今もないな。
妻:親方は当初、初めてというほど弱気になっていたんです。親方が「腎臓をもらっていいのか」と迷いが出ないように、私は「私のをあげるから、絶対に手術も成功するから!」と、親方に教えてもらったポジティブな姿勢で接しました。親方は手術してから、涙もろくなっちゃったのよね。
夫:本当に。千秋楽パーティーのあいさつで、今まで泣いたことなんてなかったのにな。
妻:私、喜怒哀楽が激しくて、性格が移植で親方に移っちゃったんじゃないかって。でも今まで、そこが足りないくらいだったから、ちょうどよかったかも(笑)。
夫:一時は泣き虫になっちゃったけど、もう大丈夫。
妻:手術直後に、新しい結婚指輪をハワイの友人に頼んでくれていたのね。
夫:手術が終わったベッドの上で、ジュエリーを扱う友達に電話したんだ。
妻:ハワイ語で親方が考えた言葉が、指輪の裏に彫られているんです。
夫:「ふたりでひとつになった」という意味なのネ。
妻:すっごいサプライズだった。びっくりしたなぁ。
夫:今までのふたりはバラバラだったからさ(笑)。
妻:あははは。ひどい~!
――お互いに点数を付けるとしたら?
妻:もう、最高点です! 100点満点よりも、もっと上。夫、父親、親方としても愛情深いし、自分の信念を持ってるし、ぶれない。生まれ変わっても一緒になりたい、と今からお願いします(笑)。
夫:おかみもすごいよ。夜中まで仕事して、朝も5時から起きて、見えないところでやってる。点数は付けられないな。う~ん、相撲でいう三賞を全部、殊勲賞、敢闘賞、技能賞をあげるかな(笑)。優勝賜杯はまだまだだよ。
妻:それはいつか、うちの力士がもらえるようになるといいな。
(聞き手・佐藤祥子)
※週刊朝日 2018年5月18日号より抜粋