元横綱武蔵丸の武蔵川光偉さんと、フラダンス界の“横綱級”ダンサーだった妻・武蔵丸雅美さん。武蔵川部屋師匠とおかみとして忙しくもやりがいのあふれる日々を送っていたが、昨年、夫に大病が襲いかかる試練が訪れた。
※プロポーズは「一緒にスモウ」 元横綱・武蔵丸の妻とはよりつづく
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――部屋を持った当初、不妊治療もなかなかうまくいかなかった。「子どもは諦めて、弟子たちの母親役に徹しよう」と妻が覚悟を決めた直後、待望の長男を授かる。今年、幼稚園に入園したジョーイ君だ。
妻:41歳での初産です。毎日てんてこまいのなか、そんな時に授かるって本当に不思議。何より親方がうれしそうでよかったな。
夫:顔だけでなくて性格も俺にそっくり。しゃべり方も俺のまねするんだよ。「おーい」「それは○○だろぉ」ってね(笑)。
妻:力士たち全員の名前を覚えて、お兄ちゃんたちに遊んでもらうのが大好きなのよね。
夫:息子には、相撲じゃなくて違う道に行ってほしいとも思う。今は「ダダのために勉強を頑張る!」って言うんだ、まだ幼稚園なのに。「ママ、バスが来るから急いで!」って急かしてるよ(笑)。
妻:そんなところも親方に似てる。親方は息子にも結構厳しいんですよ。日々の生活ではひとつひとつが丁寧で細かくて、妻として一番学んだのはそれかなぁ。
夫:最初は「なんでできないんだ」とあきれたもん(笑)。弟子たちにも、「普段からきっちりとちゃんとしないと、それが相撲に出てくるよ」と言うの。
妻:すごくよくわかる。「日々ちゃんとしていれば、こんなことにならなかったのに。親方の言うことを聞いていればよかった」と思うことがあるの、私(笑)。
――昨年4月、腎不全になり、夫は腎臓移植の大手術を決意する。腎臓を提供したのは妻だった。
妻:まず最初に私の腎臓が適合すると先生から聞き、本当にうれしかった。「もうこれはやるしかない!」と。親方のきょうだいたちにお願いするのも、ハワイから来てもらって、それぞれ生活もあるので頼めないと思っていたし……。
夫:なんと、手術の日が結婚記念日だったんだよな。
妻:そう! 先生の予定に合わせたんだけど、たまたまその日だった。先生たちもチームを組んで万全の態勢を整えてくださった。こんなに体の大きい人は初めてで、大変だったそうです。でも、「うまくいく。だって結婚記念日だよ! 心配いらないっ」と。
夫:あの時はサメ肌だったなぁ。あ、トリ肌か(笑)。