コミュニケーションを深めるために何をするか。十分なコミュニケーションをとったうえで何ができるか。方法はさまざまだ。プレゼントをする、肩たたきをする、旅行に連れ出すといった定番的な行為だけに限らない。それぞれの親子関係に応じた工夫をする余地は無限にある。
今回の特集では、読者のみなさんの参考になるよう、なるべく多くの親孝行経験者を取材し、実例を集めた。その結果が下記の一覧だ。
やはり食事や旅行、贈り物が目立つ。親の思い入れのある旅先を選んだり、こだわりの品を贈ったりしている点にそれぞれの真心と工夫がうかがえる。写真撮影や家系図、自分史の作成など、親の人生を記録に残す取り組みも少なくなかった。
両親の暮らしを改善するのも孝行の王道だ。親が住むマンションを購入したり、リフォーム代を負担したり、生活費の仕送りを始めたり。そんなにお金をかけなくても、パソコンや携帯電話などのIT環境を整えてあげたという人も。
5月13日は母の日で、さっそく親孝行を実践するチャンス。楽天リサーチがまとめた「母の日に関する調査」によると、親はモノをもらうこと以上に、感謝の言葉や一緒に過ごす時間を求めているとわかる。
『男女1100人の「キズナ系親孝行、始めました。」平成親子の“つながり”術』の著者でありマーケティングライターの牛窪恵さんは「親子で一緒に思い出をつくるのが理想的」と指摘する。孫と一緒にバレエを始めるなどの事例はそれに合致しそうだ。
先にも指摘したが、親子のコミュニケーション不足で、親のニーズを読み違えるといい結果を生まない。
東京都港区在住の自営業の女性(59)は、母親(87)が病院に行くのを聞きつけ、自宅にタクシーを呼んだところ、母は怒った。
「余計なことしないでよ」
母によると、バスは病院の目の前に止まる。せっかくなら少し歩いて足腰を鍛えるつもりだったという。
女性は「じゃ、勝手にして」と、ついとげとげしい物言いをしてしまった。今、こう振り返る。
「よかれと思ってやったけれど、母には母の考えがあった。『抜き打ち』はダメですね」
母の好みのカーディガンを見つけ、買って帰ったときも、「こんな高いの、買わなくていいのに」という反応で、がっかりしたことがある。
「母は、自分が好きなものを自分で見て選びたい人。以降、『抜き打ちプレゼントはナシ』という2人のルールをつくりました」
そのルールは10年以上守られているという。