ゴールデンウィークに帰省して親と過ごした人もいるだろう。GW後に本稿の見出しを見て、懐かしい父母の顔を思い起こした人もいるのでは。孝行したいときに親はなし。親に感謝の意をどう伝えるか。今のうちにできることをどう実践するべきか。
「自分の人生に後悔があるとすれば、父親にできなかった親孝行ですね」
東京都港区在住で、ITの会社を営む松田忠浩さん(43)は、14年前の父との会話が痛恨の思い出となっている。
「結婚記念日のお祝いで、何か欲しいモノでもある?」
「洗濯機が欲しい。これまで(妻に)苦労かけた分、手伝いたいから」
「じゃあ、年末にでも帰るから。メシ食べがてら、買いに行こう」
父はその約2カ月後、大動脈解離で突然死した。61歳だった。
「まさか死ぬとは。それまで、親孝行なんて考えたこともなかったんです」
父の“遺言”ともいえる洗濯機を母親に送ったが、
「あの日、あの足で、父と一緒に選ぶべきだった」
という思いが残った。
父の死をきっかけに、2~3カ月に1度くらいだった母親とのコミュニケーションは週1ペースに増やした。神戸の実家へは頻繁に帰るようになり、弟や妹の家族を交えて旅行もした。
「せんでいいから」「来んでいいから」
母は以前、いつもそう言っていたが、それは遠慮だったと確信できた。
今では「今度はどこに連れていってくれるの?」「ここ行きたいわぁ」と言ってくる。
「息子に甘えていいとわかると、壁がなくなったみたいに甘えてくるんです」
松田さんは自分の会社で、スマホに保存した写真データから紙の手紙を作成し、両親に送るサービスを始めた。
題して、「親孝行、お届け便。」。
アナログ生活を送るシニア世代と、デジタル世代の子どもたちとのコミュニケーションを活発化させるために考え出した。子どもから手紙を受け取った親がそのお礼に返事をすることでコミュニケーションの機会はさらに増えていく。
松田さんはこう話す。
「親子の関係が深まるほど、双方がハッピーになる。親の幸せ度は子どもの接触深度に比例する。手紙より電話、電話より対面で会う、というように」
「親孝行」を辞書で引くと、「子が親をうやまい、親に尽くすこと」とある。いくら尽くしても、親が負担に感じるようなら逆効果。子の自己満足で終わらず、親に感謝してもらえるような方法を実践したい。
松田さんが指摘するように、親子のコミュニケーションが基本になるだろう。親が遠く離れている場合はもちろん、近くで別居していても、子ども世代はついつい忙しさにかまけて会話を怠りがちだ。