![田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/d/2/425mw/img_d2cf0979ebd8f647ca9ad651cf406a7c25816.jpg)
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刑事訴追を理由に証人喚問で証言拒否を繰り返した佐川宣寿・前理財局長。ジャーナリストの田原総一朗氏は、安倍政権に危機感を募らせる。
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3月27日に、衆参両院で、財務省の佐川宣寿・前理財局長に対する証人喚問が行われた。
佐川氏は、森友学園との国有地取引をめぐって財務省が決裁文書を改ざんしたときの責任者であり、当時の国会答弁をすべて担っていた、改ざんについて最も詳しい人物である。
証人喚問に臨んでの佐川氏の表情からは“完全武装”だな、との印象を受けた。この戦略でいくと腹を固め、またその戦略どおりに4時間を貫いたようだった。
決裁文書を誰が改ざんすると決め、それがいつのことで、なぜ改ざんすることになったのか、その目的は何だったのか。そして佐川氏は改ざんにどのように関わっていたのか。
すべての与野党議員の質問に対して、佐川氏は“私は現在、告発を受けている身で、刑事訴追を受けるおそれがあるので、答弁を差し控えさせていただきたい”と繰り返した。証言拒否が、4時間で50回以上にも及んだ。決裁文書の改ざんについては、結局何も語らなかったのである。
だが、国民のほとんどは、佐川氏の証言拒否の理由に納得していない。都合の悪いことから逃げるために刑事訴追という理由を使っただけだと、不満というより憤りさえ覚えている。
それに、問題の核心については逃げ回り、安倍首相や昭恵夫人、麻生財務相の関与は、根拠を示さないまま全否定した。これは唐突であり、不自然である。逆に何かあるのを隠しているのだと捉えざるを得ない。
それにしても、佐川氏が刑事訴追を理由に核心については一切答えない戦略に出るとは、大方予想できていたはずである。その場合に、佐川氏をどのように問いつめて、どのようなことを引っぱり出すのか。ここが野党各党の勝負所だったはずである。だが、共産党を除いては、どの野党議員も佐川氏に拒否されたままで、何も引っぱり出せないで終わった。野党各党は、戦略のないままに証人喚問に臨んだということなのか。