──当時の政治家のスピーチというのは現在以上に国民に訴えかける説得力があったように映ります。スピーチ・シーンを演じるにあたり参考になるものはありましたか?
「残っているチャーチルのスピーチのほとんどは、実際のスピーチの後にBBCラジオ用に録音されたものだ。それは、実際国会でやったスピーチよりも感情の起伏がなく、平坦であることが想像できた。600人の前でやるスピーチと、マイクに向かって一人で読むスピーチはかなり様子が異なっていると思うからね。だから録音はある程度しか役に立たなかったんだ」
──当時の政治は、貴族階級が庶民を先導するような形であることがわかりますが、現代の民主主義とかなり違うと感じましたか?
「何よりも現代の民主主義というか政治は昔に比べるとずっと視覚的になったと思うよ。政治家のイメージというのが重要になってきたと思うんだ」
──映画であなたの演じるチャーチルを見て、観客は何を得ることができると思いますか?
「言葉の力だろうな。絵文字ではなく! 人の言葉を聞くことの喜び。そしてイギリスはナチス・ドイツに屈する一歩手前までなぜ、いってしまったのか。この真実を知ることができることは収穫だろうね」
(取材・文 高野裕子)
※週刊朝日3月23日号