──昨年大ヒットした映画「ダンケルク」がまったく同じ歴史的瞬間を描いていますね。ほぼ同時期にあの映画が製作されていたことは知っていましたか?
「確かに『ダンケルク』は、この映画とペアになったような映画だ。でもこの映画の製作中、あの映画については知らなかったんだ」
──役づくりのためにリサーチしてみて、チャーチルについて新発見した最大のことは?
「ほぼスーパーヒューマンと言えるような人物だ、という点だよ。スピーチが自筆なのは周知の事実だし、首相だけでなく、多くの大臣も務めた。本を50冊以上も書いた。シェークスピアよりずっと多い文字数だよ。そのエネルギーたるやすごいんだ。著述、絵画、政治、作家としてノーベル文学賞もとった。それは驚くべき業績に圧倒されるね」
──さらにウイスキーやシャンパンもただならぬ量を飲み、葉巻も吸い、その食生活で90歳まで生きたんですよね。
「確かにお酒もかなり飲んだようだ。当時の人はかなりの量を飲む習慣があったようだし、1日10本の葉巻を吸った。また彼の食生活も健康的とは言えなかった(笑)。2度の心筋梗塞を生き延びたんだ」
──膨大なニュースなどの映像から、多くの人がチャーチルはどんな歩き方をして、どんなふうに話したか知っています。その点も俳優として大変だったと思いますが、再現するため、どんな工夫をしましたか。
「役づくりにはたぶん1年以上かかったと思う。リサーチして資料を読むという作業に加え、ニュースの素材を何度も何度も繰り返して見て、彼の動きを研究したんだ。手の使い方、歩き方、声の使い方。そうやっていくうちに、彼の物まねをするのではなく、自分なりのチャーチル像を作り上げていった。自分の考えるチャーチル像を作りたかったんだ。単にいろんな情報を集めてコピーしていくのではなく」
──それで作り出したあなたなりのチャーチル像とはズバリ、どんな人でしょう。
「それは多くの映像やニュース素材があるんだが、それをいろいろと掘り起こしてみていくうちに、かなり体重があったにもかかわらず、とても歩き方が速い人だったと気がついた。動きが機敏で無駄がない。目つきもとても鋭く輝いていた。そういった彼の知られざる一面を発見できたのは、よかったね。これまで多くの人が演じたチャーチル像は、シリアスでアングリーな演じ方がほとんどだった。だが、今回は新しい魅力をたくさん演じることができ、うれしかったね」