「結局、こちらが出した手紙を誰が受け取り、誰が正式な担当者だったのかも最後まで確認できなかった。担当者もわからなかったので、首相ではなく代理の方と会ったり、フィン氏からのメッセージを書いた手紙を渡したりという別の手段で交渉をすることもできませんでした。首相が外遊等で多忙なのは十分理解できますが、ダメならダメと正式に伝えてほしかった」(同)


 
 スッキリしない展開に追い打ちをかけるように、一部の識者などからはICANに対して「核保有国ではない日本ではなく、米国や北朝鮮に言いにいけばいいではないか」などの批判の声も挙がっている。こうした意見について聞くと、川崎氏はこう答えた。

「フィン氏はノーベル賞の受賞講演で、9つの核保有国の名前を一つ一つ挙げ、厳しく批判しています。それに、現在のICANの運動は、圧倒的な数の核非保有国が『核兵器は国際法違反だ』という態度を表明することで、核保有国が新たに核兵器をつくったり、使用したりする動きを抑制することに主眼を置いている。いわば、非核保有国で核保有国を包囲する戦略です。そのためには日本のように、現在は他国の核の傘の下にいる国々に訴えて、賛同を得ていくことが非常に重要なのです」

 内閣総務官室にICANとの交渉について問い合わせたが、「この件がわかる担当者が存在しない」とのことだった。日本政府がこうした主張に耳を傾ける日は来るのだろうか。
(本誌・小泉耕平)
 
週刊朝日  2018年2月2日号より加筆