治療上の問題点の一つは、既存の抗うつ薬を服用しても、うつ症状の十分な改善が望めないことだ。これは双極性障害が躁状態とうつ状態を繰り返すことを特徴とする病気であり、うつ病とは発症メカニズムが異なるためと考えられている。患者の約半数が、2年以内に再発するという再発率の高さも問題だ。

 今年10月、「双極性障害におけるうつ症状の改善」を適応(健康保険で使用が認められた病気・症状)とする治療薬「ビプレッソ」が発売された。これは、もともと統合失調症の薬として開発された「非定型抗精神病薬」の一種であり、双極性障害のうつ症状(双極うつ病)に効果が期待される。加藤医師は、ビプレッソが発売された経緯をこう指摘する。

「海外では、以前からビプレッソの成分であるクエチアピンを配合した薬が双極うつ病に使われていました。日本うつ病学会双極性障害委員会が12年に発表したガイドラインでも、この薬が双極うつ病に対する第一選択薬の一つに挙げられています。この薬は1日2~3回服用する必要がありましたが、ビプレッソは1日1回の服用ですむよう改良したものです。国内の治験により双極うつ病に対する有効性・安全性が確認され、健康保険で使えるようになりました」

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