サラリーマンには厳冬の税制改革(c)朝日新聞社
サラリーマンには厳冬の税制改革(c)朝日新聞社
この記事の写真をすべて見る

 森友疑惑が追及された国会で「記録は廃棄した」と安倍晋三首相への“忖度”をし、7月に国税庁長官に栄転した佐川宣寿氏。彼をトップにした税制改革だが、会社員は増税ラッシュになるのに、富裕層の金融資産には手を付けずとチグハグで、ブーイングの嵐なのだ。

 税金は取りやすいところから取る、との意向が透けて見える。やはりターゲットにされたのは、会社員の給与だった──。

 自民・公明両党は12月14日、2018年度の税制改正大綱を正式に決定した。最大の焦点となったのが所得税改革で、年収が850万円を超える会社員が増税になる。

 すべての人を対象にした基礎控除(38万円)を10万円引き上げたうえで、会社員の給与所得控除を一律10万円引き下げる。年収850万円以下の人は差し引きゼロになるが、現在、控除額の上限は年収1千万円以上で220万円に設定されている。これを年収850万円以上で195万円まで引き下げ、高所得者になるほど税負担が重くなる仕組みだ。子育て介護世帯は増税の対象外となったとはいえ、会社員や公務員の約230万人が対象になる。

 所得税法に詳しい税理士の柏木隆雄氏が指摘する。

「都市部で住宅ローンなどを抱えている場合、850万円が高所得者と言えるのでしょうか。18年からは所得が1千万円を超える人の配偶者控除もなくなる。働き盛りの人たちを狙い撃ちにして、消費への影響が心配されます」

 サラリーマンの恨み節が聞こえてきそうだが、生活を脅かす増税はこれにとどまらない。

 たばこ税も8年ぶりに増税され、21年までに1本あたり3円引き上げる。また、地価税の創設以来27年ぶりとなる新たな税金「国際観光旅客税」が19年1月に導入される。海外旅行や出張などで日本を出国するときに、1人1回千円が航空運賃などに上乗せされる。さらに森林管理の財源を名目にして「森林環境税」も創設。1人当たり年千円が住民税とともに徴収される。

次のページ