所得税は各種所得を合算して税額を計算する「総合課税」が原則だが、株の配当や譲渡益は「分離課税」で、他の所得とは別個に計算する。税負担は住民税を合わせても20%(所得税15%、住民税5%)だ。

 財務金融委員会でこの問題を質した宮本徹衆議院議員(共産)が語る。

「富裕層がたとえ株の譲渡で10億円儲けたとしても、所得税は15%しかかかりません。金融所得課税の税率を、株の譲渡益については欧米並みに引き上げるべきです。1億円を超えた場合、アメリカのニューヨーク市は30%、イギリスでは28%、フランスにいたっては60%も徴収しています。富裕層の税負担が軽くなっていることにメスを入れずに、サラリーマンから増税するというのでは不公平感が拡大するばかりです」

 個人への所得税や消費税が引き上げられてきた一方で、安倍政権は法人税を引き下げて企業の業績回復を後押ししてきた。そのかいあってか、16年度末の日本企業の内部留保は初めて400兆円を超え、史上最高額を更新した。

 しかし、16年度の国の一般会計税収の総額は約55.4兆円で、前年度を約8200億円も下回った。減少幅が最大だったのは法人税で、約5千億円の減収。法人税率の引き下げが響いたのは明らかだ。

「消費税を導入した1989年度の税収総額は54.9兆円で、現在とほとんど変わりません。当時、3%だった消費税の税率は8%に上がり、この間、消費税の税収は14兆円増えています。その分の国の税収はどこに消えたのか。結局、国民の負担を増やして、大企業と富裕層を減税しただけなのです」(宮本氏)

 また、今回も大企業の場合、3%以上賃上げして国内設備投資を拡大すれば、賃上げ総額の最大20%を減税するという。この減税措置は、20年度までの3年間の特例措置だ。

 前出・長妻氏が批判する。

「アベノミクスで賃金が上がらないから、そういうことで強引に引き上げようということか。しかも3年間だけニンジンをぶら下げるというやり方は、あまりにも露骨です。いま非正規雇用は4割を超え、若い現役の世代でも増えている。所得格差は広がっています」

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