19年10月の消費増税を待たずに身近な増税が相次いで押し寄せ、国民の怒りは燎原の火のように広がっている。怒りの矛先は、森友学園をめぐる疑惑を隠し続けた後に、徴税実務のトップである国税庁長官に栄転した佐川宣寿氏である。
佐川氏は前職の財務省理財局長を務めていたとき、国有地の価格が8億2千万円も値下げして森友学園に払い下げられた問題で、国会の答弁に立った。
野党から国と森友学園の交渉記録など資料の提出を求められても、「事案が終了しているので記録は廃棄している」などとくり返し発言。行政文書の取り扱いについても「紙もパソコン上のデータも消去され、復元できないシステムになっている」とまで言ってのけた人物だ。
立憲民主党の長妻昭衆議院議員が憤る。
「年明けには確定申告が始まります。一般の納税者の方が税の申告をするときに、領収書や書類を捨てちゃったんだけど、経費として認めてくださいと言っても絶対に通用しません。国民の感覚からすると、佐川氏は意図的に資料を捨てた疑いがあるのにおかしいじゃないか、という気持ちになるのも当然です」
実際、国民の間に「佐川辞めろ」の声が鳴り響いている。東京大名誉教授の醍醐聰氏を中心とする「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」では、佐川長官の罷免を求める署名が2万筆以上集まった。
醍醐氏がこう語る。
「署名した人のなかには<自営業で毎年申告をしています。あのような者や一味に一円も納めたくない>や<税務署員として仕事がしにくいので、早く辞めてくださるようお願いします>といった怒りのメッセージも次々に届きました。平然とウソをつく政府に『税金を任せられない』との声が高まっています」
安倍晋三首相は、任命責任を免れない。佐川氏を国税庁長官に充てたことについて「適材適所で行った」とうそぶいたが、論功行賞人事と言われても仕方がないだろう。そのことを象徴するように、今回の税制改正も不公平感がまったく解消されていない。