一冊の本が老後マネーの世界を揺さぶっている。
『ライフ・シフト』。英ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授らが書いた、「人生100年時代」を乗り切るための本だ。昨年秋に出版されると瞬く間にベストセラーになり、現在16万部。老後マネーの考え方もしっかり論じられているが、とりわけ「2007年に日本で生まれた子どもの半分は107歳まで生きる」とする予想が人々の心をとらえた。
ファイナンシャルプランナー(FP)の深田晶恵さんは、『ライフ・シフト』後に、「より長寿」を意識する男性が増えたという。
「90歳までの人生を考えてマネープランを作る、これが私の持論です。あの本が出る前は、『どうせ90歳までは生きられない』と言う男性が多かったのですが、最近は『ひょっとしたら長生きするかも』に変わりました」
大手資産運用会社フィデリティ投信の研究所、フィデリティ退職・投資教育研究所の野尻哲史所長も、
「私は95歳までのライフプラン作りを提案しています。以前は『エーッ、長いな~』だったのに、最近は『何だ、100歳でなくていいのか』という反応が多くなりました」
人生先立つものはお金。超長寿社会がどんどん現実化するにつれて、それへ向けてのお金の備えを気にする人々が増えているのだ。
果たして、どれくらいまでのライフプランが必要なのか。そして、最近では65歳が多いが、会社を辞める時までにいくら準備しておけば安心できるのか。
日本人の平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳だが、これは今のゼロ歳児が何歳まで生きるかを示す数字だ。実際の日本人が何歳まで生き延びるかは、厚生労働省の「簡易生命表」を見ご確認ればわかる。
最新のそれによると、「100歳」まで生き残る確率は男1.6%、女6.9%で、さすがにまだごく少数だ。しかし、「95歳」になると様相が変わる。男9.1%に対して女25.2%で、女性は一気に高まる。「90歳」まで下げると男25.6%、女49.9%となり、男性でも4人に1人が生存し、女性は実にほぼ半数が生きている結果になっている。
確かに、90歳は確実にライフプランに組み込む必要がありそうだ。夫婦単位で考えると95歳も十分視野に入ってくる。