いまのフリンは蜜の味がしない?(※写真はイメージ)
いまのフリンは蜜の味がしない?(※写真はイメージ)
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 作家・エッセイストの嵐山光三郎氏が『週刊朝日』連載のコラム「コンセント抜いたか」で、明治時代を生きたアナーキストたちの不倫についてつづる。

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 明治二十五年に創刊され、最大発行部数を誇った「万朝報(よろずちょうほう)」という新聞があった。三面で有名人のフリン事件を暴き、政治家の賄賂スキャンダル、経済人の淫行暴露を掲載して人気を得た。社会的事件の記事を三面記事というのは、これに由来する。

 社主の黒岩涙香(くろいわるいこう=1890~1920)はデュマの『巌窟王(がんくつおう)』やユゴーの『噫無情(ああむじょう)』を訳し、犯罪怪奇小説に通じていたから、記事は簡単、明瞭(めいりょう)、痛快を綱領とした。涙香は通称「蝮(まむし)の周六(しゅうろく)」と呼ばれていた。本紙は赤味を帯びた紙を用いたので「アカ新聞」(悪徳新聞)とも呼ばれた。

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