夫:僕は最初から一点の曇りもない、心のきれいな人だなと思った。

妻:うれしいですねえ、そんなこと言ってくれて。

――だが当時、夫と妻の“格差”は歴然だった。

夫:収入もだけど、社会的な格差ですよ。当時、僕は俳優業はあまりうまくいっていなかった。スポーツ紙に「美人プロゴルファー、結婚!」とでかでかと載ったけど、「お相手は俳優」と載った僕の写真は3センチ。

妻:あはは。

夫:周囲は僕のことをヒモ的に見るわけです。さすがにプライドがすごく傷ついた。でも反骨心だけはあるから「なんとか軌道修正してやる!」と。いまでも忘れられないんだけど、ある朝、彼女が新聞の折り込みチラシを見ながら「市場で朝から2時間勤務、時給650円だって。これ、できるんじゃない?」と言ったんです。

妻:発破をかけるつもりでね。そのとき彼は役者の仕事も途切れていて、家庭教師先も2軒だけ。月に10万円も稼げない状態だったから、もうちょっとがんばってもらわないと、って。

夫:僕はそれで発奮したんです。家庭教師センターを立ち上げて、講師も雇った。それが大当たりした。

妻:彼は教えるのがうまいんです。ちゃんと有名大学に合格させるし、お医者さんになった教え子もいるのよね。

夫:役者よりもそっちのほうがメインになってきた。

妻:自宅も購入できたしね。子どもがほしくなって、93年にようやく妊娠したら、そこでわが家の一大事が起こったんです!

夫:そう。僕にリポーターの仕事をやらないか、と話がきた。(聞き手・中村千晶)

「『周りはみんな敵』リポーター阿部祐二を助けた“鬼嫁”の存在」」へつづく

週刊朝日 2017年11月3日号より抜粋

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