薬物療法は、消化器や性機能などのほかさまざまな副作用が表れることも・・・(※写真はイメージ)
薬物療法は、消化器や性機能などのほかさまざまな副作用が表れることも・・・(※写真はイメージ)
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心の不調ピラミッド診断法 (週刊朝日 2017年10月6日号より)
心の不調ピラミッド診断法 (週刊朝日 2017年10月6日号より)

 うつ病と診断され治療しても回復しない患者が増加している。その原因のひとつに、多くの種類の薬剤を処方する「多剤処方」が考えられ、厚生労働省は注意喚起している。最近その薬物療法を見直す動きに注目が集まっている。

【図はこちら】心の不調ピラミッド診断法

 2014年の調査によると、うつ病、躁うつ病の患者数は約112万人で、30年間で10倍以上になった。

 現在おこなわれているうつ病の治療は、薬物療法が中心だ。これは病気の基礎にある脳の機能異常を是正し、症状の消失を目指した治療だが、消化器や性機能などのほかさまざまな副作用が表れることもある。

 患者の症状の訴えに対し、医師が薬を次々に処方することで副作用止めも増え、薬の相互作用でかえって体調を崩す人は少なくない。

 多剤大量処方は世界的にも問題視され、日本でも厚生労働省が15年から処方の規制を始めた。また今年3月には抗不安薬や睡眠薬として使用されるベンゾジアゼピン系44種類の薬に依存性があるとして、長期投与への注意喚起がなされた。

 このため「服薬中の精神薬を見直したい」と考える患者も増えている。しかし減薬に積極的に取り組む医師はまだ少数だ。その一人、杏林大学名誉教授で、はるの・こころみクリニック院長の田島治医師は、薬を適正に減薬する「引く治療」の大切さを早くから提言し続けている。

「向精神薬は開始より中止するほうが難しい。脳に作用する強力な薬のため、減薬の際には、どの薬でも離脱症状と呼ばれる状態が起きると想定したほうがよい」
 と減薬の可能性とその難しさを指摘する。

 減薬を希望する患者に対し、田島医師は、次の三つの視点で診断し直す。1.本当に精神の病気があるのか2.引きこもりや生活環境の影響による症状はないか3.薬の悪影響はないか。

 現在の状況だけでなく、発病前の環境や発症の経緯などを3~4回の診察で丁寧に聞き、必要に応じ心理テストや発達障害などの検査をした上で、患者と話し合いながら一緒に減薬の計画を立てる。

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