高齢者が家にためこんだゴミを「これは財産だ」と主張すれば、第三者はすぐには片付けられない。悪臭などで近隣から苦情を言われると地域からも孤立する。

 ゴミ屋敷問題にいち早く取り組んできたのは、東京都足立区。8月時点で高齢化率は約25%と都内平均より高く、一人暮らしも多い。

 問題解決の専門部署「生活環境保全課」を12年に設け、近隣住民からの相談窓口を一本化した。道路管理、福祉、介護など行政の各部門が縦割りの壁を越えて協力するしくみを整えた。

 祖傳和美課長は言う。

「例えば、ゴミ屋敷の家主が認知症の高齢者ならば医師につなぐ。ゴミを片付けられなければ、ヘルパーさんにも入ってもらい、介護保険のサービスを使えるように担当部署と連携する。これまで苦情を受け付けると、内容によって様々な部署にたらい回しになることがありました。窓口を一本化することで、ゴミをためる原因を各部署と話し合って対策を講じています」

 13年には「足立区生活環境の保全に関する条例」を施行し、悪質なケースは強制撤去も可能にした。費用を捻出できない家庭には、審議会の同意を得て100万円を限度に支援する。

「条例には調査権を盛り込んでいます。身寄りがないと思われた高齢者のケースでも、調査権を使って戸籍謄本を閲覧して遠い親戚にたどり着き、解決できました」(祖傳氏)

 ゴミ屋敷対策への相談件数は、12年度から今年8月までで計691件。うち540件を解決した。これまで強制撤去の例はない。最終目的は、ゴミの片付けだけではなく、家主が人間らしい暮らしを取り戻すことに置いている。

 ゴミ屋敷をつくらないためには、一歩手前の“隠れゴミ屋敷”への対応も大事という。どういうものか。

「庭の木が小学生たちの通学路の邪魔になっている」

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