30年間で培われてきた講師たちの人脈が中心です。稲垣君の代表曲、「夏のクラクション」はマイカの講師、重実博君のプロデュース。清水さんはやはり講師の、堀口和男君が親しくしています。ターボーが来てくれたのはうれしかったですね。彼女はマイカと太いつながりがないにもかかわらず、協力してくれました。
──3日間とも由実さんは出演しました。
東京公演と名古屋公演の間だったので、体力的な負担は大きかったと思いますよ。曲もバンドもツアーとは別の構成で、しかも生徒の作品まで歌いましたから。それでも終演後には「参加してよかった!」と言ってくれました。学園祭のような熱の中で歌ったことが、彼女には新鮮だったのかもしれません。
──由実さんはウィットに富んだMCでも客席をわかせていました。マイカについては「松任谷校長は映画『チップス先生さようなら』が大好きで、彼は毎回ラストシーンで目に涙をためていたんですよ。それほど、若いころから教えることに思いが強かったんです」と話していましたね。
あの話は彼女の記憶違いです。確かに「チップス先生さようなら」は何度も観ました。でも、感動は由実さんのほうが大きかったはずです。ただ、MCを聞いて、チップス先生と僕を重ね合わせて見ていたことを知り、久しぶりに映画を観たくなりました。
──もう一つ、教えることへの松任谷さんの執念を表すエピソードとして、松任谷さんがかつて、犬ではなく飼い猫に、お手! お座り! 待て! を教え込んだことも話していましたね。
こちらの話は事実です。以前、うちでスコティッシュフォールドのオスを飼っていましてね。人の言葉をよく理解する猫だったんですよ。毎日、待って、お座りして、お手をしてから食事を与えていました。
──30年間でマイカは何人ものプロの音楽家を送り出してきました。
いきものがかりやポルノグラフィティのプロデューサーの本間昭光君、シンガー・ソングライターの熊谷幸子さん、元m‐floのLISAさん、ヴァイオリニスト・増田太郎さんなど。サクソフォン奏者の伊勢賢治君やチェリストの伊藤修平君は、由実さんのライヴをサポートしてくれています。
──既存の音楽大学や音楽科のある高校とは何が違うのでしょう。