教えるだけではなく、講師たちが生徒と一緒に音楽を生もうとしていることです。あくまでも、生徒自身がつくりたい音楽、演奏したい音楽を尊重しています。つまり、スタジオでのプロデューサーとアーティストの関係をそのまま教室に取り入れたわけです。

──なぜ、そんな発想を?

 僕はずっと教えることが好きで、プロになれなかったら音楽教師になろうと思っていたほどです。でも、実は、教えることでは苦い体験があります。すでに由実さんや(吉田)拓郎の音楽を手掛けていた1970年代後半に3年ほど、大手楽器メーカー主催の音楽学校で講師を務めましてね。僕はワンクールごとに目標設定をして臨みました。ところが、毎回目標に到達できませんでした。生徒は一所懸命やっていた。僕も必死でした。でも、うまくいかなかった。

──理由は?

 先生と生徒というくっきりと線引きした関係には限界があるのでしょう。生徒は一人ひとりまったく別の人間です。生徒が何をやりたいのか、講師は徹底的に聞いて一緒に音をつくるべきだと考えました。でも、当時の既存のスクールでは難しかった。ならば、自分で作るしかない。それがマイカを始めたきっかけです。

──今も同じスタンスですか。

 もちろん。だから、生徒が好んで聴いている音楽を僕も必ず買って聴いています。何が好きなのか、どこが好きなのか、教えてもらっています。生徒は学校の中では、アーティスト。講師はプロデューサー。プロデューサーはアーティストが興味のない音楽を強いることはしません。由実さんのCD制作と同じしくみを学校でも実践しています。(神舘和典)

週刊朝日  2017年8月18-25号

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