漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、「ゆとりですがなにか 純米吟醸純情編」(日本テレビ系 7月2日・9日 22:30~ Hulu配信中)で飛び交うセリフに注目した。
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宮藤官九郎脚本、3人のゆとり世代の男たち(岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥)を描いた連続ドラマが2週連続SPで復活だ。クドカン版「ふぞろいの林檎たち」ならぬ「ゆとりたち」。
企業を退社した正和(岡田)は、結婚して実家の酒造会社の営業部長に。小学校教師の山路(松坂)は学年主任に。おっぱいパブの呼び込みをしていたまりぶ(柳楽)は11浪の末大学に入学し、ただ今就活中。見ているうちに登場人物全員、自分の同級生のような顔見知り感がみるみるわいてくる。これが宮藤脚本の醍醐味だ。
連ドラの時は、とことんイラッときた山岸(太賀)。「道わかんないんで、駅からタクっちゃいました~」「メール見ないんで、次からLINEでおなしゃ~す(お願いします)」って、そんなゆとりモンスターに対しても「入社4年目か、山岸にしてはがんばってるじゃん!」と、もはや全力で後輩を見守る気分だよ。
そして今さらながら感服つかまつるのが、クドカンの言葉選び。例えばおっぱい連呼の呼び込み。「おっぱいいかがっすか? そろそろおっぱいの時間じゃないっすか? ほぼほぼおっぱいじゃないっすか?」。この「ほぼほぼ」ね。それほど市民権を得てなかった気がするのに、これ以降何かと使われるようになった気がする。宮根誠司なんかも、ちゃらっと使ってるから「ほぼほぼ」。
その言葉選び、かゆい所に手が届くというか、かゆくなる前にもう手が届いている感じ。今回のSPだと、まりぶの中国人の嫁・ユカ(瑛蓮)のセリフ。「(バイトの)時給よりも延長保育代の方が高くつくよ、日本死ね」。新語・流行語大賞のトップ10に選ばれながらも、周囲でいっさい使ってる人がいなかった「日本死ね」に、まさかここで出会えるとは。
かつて「余命1ヶ月の花嫁」という映画がヒットしてから、やはりクドカンのドラマ(「うぬぼれ刑事」)で、「余命3~4日の花嫁」ってタイトルが出てきた時のような不意打ち感。言葉に対するモヤッとした気持ちが、膝ごとカックンされる感じだ。
ついでにクドカンは「日本死ね」に対するリアクションも教えてくれた。「うるさい、日本死ね」とあしらわれたら、笑顔全開で「日本死にまーす!」。日常生活でもぜひ使いたい。
※週刊朝日 2017年7月21日号
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