プロゴルファーの丸山茂樹氏が、将棋の藤井四段に賛辞をおくるとともに、自身の憧れだというトム・ワトソン選手との思い出を語った。

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 いやいや、ほんとにすごいですね。テレビで彼を見ない日がないぐらいじゃないですか? いつも感心して見てますよ。将棋の藤井聡太四段(14)です。

 6月26日にプロデビューから29連勝の新記録をつくってね。このまま竜王戦までいっちゃうんじゃないかって勢いですよ。ハハハハ。一対一の勝負だから、ゴルフだとマッチプレーにあたるかな。そう考えてみると、いくら強い新人が現れたといっても、やっぱり29連勝なんてできないですよ。だから、相当な下克上がある世界なのかなと思います。

 藤井君はパソコンで将棋を研究するようになってから、グッと力をつけたそうですね。「藤井メソッド」って名付けて、本でも書けるんじゃないですか? それをもっと幼い子たちがまねして強くなるというね。人との対戦の経験値より、パソコンと何千回とやって、医者じゃないけど「症例」を集めて。そうやって29連勝が生まれたわけですね。


 中学生だけど、なんだかもう学校に行く時間なんかないぐらいに対局してますよね。いつもスーツにネクタイで、妙に落ち着いてるから会社員に思えちゃう。どんどん勝ち続けてほしいですよね。

 僕もまかり間違えば囲碁の道に進んでたかもしれないんですよ。父親が大好きで、僕を棋士にしたいと思ってたんです。だから小さいときは結構やってたんですけど、僕はじっと座ってられなかったみたいです。碁石を全部落としちゃったりね。ふざけてばかりだったから、父親も「こりゃダメだ」となったそうです。

 それで10歳からゴルフを始めたわけですけど、僕が世界を意識するきっかけになった人に、先日再会できました。今年も僕は「ネスレインビテーショナル日本プロゴルフマッチプレー選手権レクサス杯」(8月17~20日、北海道・恵庭CC)でアンバサダーを務めさせてもらうんですけど、海外メジャー8勝のトム・ワトソン(67)がグローバルアンバサダーに就任しまして、その記者発表で会えたんです。

 ゴルフを始めてすぐ、トム・ワトソンという名前を意識するようになりました。忘れもしないのが、1981年のマスターズです。僕は11歳で、父親と一緒に自宅のテレビで見てました。ワトソンが優勝するんですけど、最終日の18番グリーンへ向かっていくとき、めちゃくちゃいい笑顔を見せたんです。あの笑顔が頭から離れなかったなあ。魅力のある人だなあ、って。僕も同じことをしたいと思って、そこから世界で戦うことを意識するようになりました。

 僕が16歳のとき、ワトソンが日本であるイベントに参加して、そのとき初めて会いました。一緒に写真を撮らせてもらって、ショットのときに一番意識してるのは何ですかと質問しました。「アドレスとグリップだ」って。優しくて、僕なんかとは違って「紳士一直線」みたいな人です。

 忘れられないのが2001年のマスターズ。何と、ワトソンと一緒に回ったんです。僕が11歳のときのマスターズで優勝したワトソンと、20年後に一緒にオーガスタでプレーできるなんて。これはもう、僕の生涯の思い出ですよね。今回もいろいろ聞かせてもらいました。紳士でスマートでね。あのころよりも憧れの気持ちは強いかもしれません。

週刊朝日  2017年7月14日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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