巨人が13連敗で球団ワースト新記録を作った責任を取って堤辰佳GMが退任し、新たに就任した鹿取義隆GM。西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、新GMへの期待、そしてリーグ戦再開後の各チームの課題を語る。

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 今年の交流戦もパ・リーグの力が上回った。このコラムでも指摘したとおり、明らかにパのほうがスケールの大きな野球をしている。そして予想したとおり、パの上位に割って入ったのが広島。リーグ2位の阪神はまだしも、3位以下のチームと大差がついてしまった。

 巨人は球団ワーストの13連敗までいき、ついにGMが交代した。シーズン中の交代は異例というが、そこはやはり球界の盟主。どこかに打開策を見いださなければいけないし、すぐにテコ入れをした。良しあしは数年後の結果でしかわからない。しかし、今動くことで、決してあきらめない姿勢、厳しさを示すという意味では、危機感をチーム内に共有できると考える。

 私の古巣、西武でもプレーした鹿取義隆新GMは、侍ジャパンのアンダー世代の監督を務めた経験もあり、どんなタイプの選手がどれだけ伸びていくかという「引き出し」や選手に対する知識量は他の追随を許さないであろう。しかも、かつては海外へコーチ留学にも出かけている。単に米国内のメジャーリーグで力の落ちた選手を獲得するのではなく、「ダイヤモンドの原石」を発掘してくれるのではないか。巨人は3軍制を敷いている。鹿取新GMには、ドラフト、外国人を含めた「選手獲得」、そして「育成システム」に最大限の力を発揮してくれると期待したい。

 このコラムを読者の方々に目を通していただくときには、さあリーグ戦再開といったところだろう。ここから優勝争いをするチームにとって大事なのは、いかに穴(弱点)を補強し、そして戦力を最大化するかだ。7月31日の期限ギリギリまで、トレード、もしくは新外国人選手の獲得の動きが出てくる。

 
 パ・リーグは、首位を走ってきた楽天が、余力を残しながら先発ローテーションを回し、主力野手にも定期的に休養を与えてきた。それがプラスに働けば、最後まで優勝争いをするだろう。ソフトバンクは内川、デスパイネら中軸に加えて、千賀、武田ら先発投手も戦列を離れている。戦力が整う8月以降に勝負をかける意味でも、今は楽天に離されないことが大事だ。

 過去数年と違って、西武も久々に首位が見える位置にいる。今年は開幕当初にも指摘したが、辻監督の走塁への意識がチームに浸透。金子侑、源田の1、2番の足に、秋山、中村剛、浅村、メヒアら中軸が絡む。投手陣が梅雨時を踏ん張れば、面白い戦いができると思う。

 セ・リーグは3位以下が大きく離れてしまった。これを巻き返すには、昨年の日本ハムのように、大型連勝をするしかない。それでも広島が貯金を増やしたら届くこともできない。広島は、昨年以上に強固だ。リーグ優勝を果たした自信が備わっている。さらに、薮田のような勢いのある投手も出てきており、昨季の沢村賞左腕ジョンソンも復帰した。よほど歯車が狂わないかぎり、大型連敗はない。昨年同様、独走する気配は漂っている。

 今は3位までプレーオフに進出できる。勝率5割前後となればチャンスは出てくるのだから、下位に沈む球団も簡単にあきらめるわけにはいかない。それぞれの立ち位置(順位)で監督の起用法、そしてフロントの動きも変わる。これからは、そんな時期になる。

週刊朝日  2017年6月30日号