妻:形にしないで終わっちゃう。でも「いつか、時は来る」なんて堂々としてる。
夫:お笑いの世界に入るときもそんな感じだった。「お笑いやろうぜ! コンビ名はアニマル梯団(ていだん)だ!」って決めて、僕はそこで終わり。相方がオーディションをしてくれる事務所を調べて、手続きもなにも全部やってくれた。
妻:この人、ずるいんですよ。周りに「なにかしてあげなきゃいけない」っていう空気を出すのがうまい。
夫:思えば、うちの父にもそんなところがあった。普通のサラリーマンでしたけど、小さいころ父と歩くとみんなが父に声をかけてくるんです。盆踊り大会とか野球部とか、父の音頭がないと始まらない、みたいな。
妻:これもある種、持って生まれた才能だと思うんですけどねえ。
夫:でも4年前、2人目の子どもが生まれたころかな。彼女がどん底になったときがありました。
妻:彼は4歳から書道をやっていて、08年から「書家としてやりたい」と本格的に始めたんです。「子どももいるのに、収入はどうするの?」と思いましたが、彼はまったくそういうことを考えない。私もはっきり「家計が大変だ」と言わなかったので、けっこうたまってたんでしょうね。
夫:ふと見ると彼女が部屋の隅っこで、宙を見てじーっと座ってるんです。さすがに僕も「いままで好き勝手にやらしてもらってたけど、ホントにどん底になったら、オレ、バイトでもなんでもするから」って言ったら、彼女が「いまがどん底だよ!!」って。
妻:道具にお金がかかるんです。筆も何十万円もする。「仕事の道具だから仕方ない」と黙ってたけど、不安と不満がたまってた。
夫:このときばかりは僕も「がんばらなきゃ!」って思いました。
妻:最近、ようやく書家としてもお仕事をいただけるようになって。
夫:テレビ番組で「書家になる」って言ったとき、みんなに「40過ぎて、家族困らせて、夢語るな!」って言われました。黙ってたけれど、内心は「え? 40歳過ぎたら、夢語っちゃダメなの?」って思った。
妻:うんうん。
夫:いまの世の中って「ダメだったら離婚すればいい」「夢なんてどうせ叶わない」という感じになっている気がするんです。でも僕は夢を諦めたくないし、「夫婦」を簡単に壊したくない。タイヤのネジが緩んだだけで「もう車、捨てるわ」なんて人いないでしょう? 夫婦もそうだと思うんです。ネジが緩んでるなら締めればいい。なんとか直したれ!って思う。