渋い名脇役として映画やドラマで活躍し続ける伊武雅刀さん。しかし、意外な作品で主演を務めたこともあると、作家・林真理子さんとの対談で明かしてくれました。
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林:伊武さんは最初から主役をあんまり望まなかったそうですね。
伊武:映画が小さいころから大好きで、いつか出たいと思ってたけど、憧れたのは主役のスターさんじゃなくて。条件的に俺だったらこのポジションだろうなと思うわけですよ。
林:石原裕次郎さんじゃなくて?
伊武:「足が長いな。無理だな」とか思って。宍戸錠さんとか成田三樹夫さんとか、脇役が好きで。小学校のときから好きだったのは、山形勲さんとか薄田研二さんとか月形龍之介さんとか……。まあ、月形さんは「水戸黄門」で主役をやっていましたけど、渋い脇が好きでしたね。
林:でも、伊武さんが主役の映画、なんかありましたよ、絶対。
伊武:実は映画で1本あるんですよ。にっかつロマンポルノ……。
林:えっ、ロマンポルノで主演したことあるんですか!
伊武:いや、日活がロマンポルノをやめて「ロッポニカ」というレーベルになって、その第1弾として2本撮ったんですよ。1本が神代辰巳監督の「噛む女」、もう一本が俺が主役の「メロドラマ」(1988年公開)という映画。
林:へえ~、そうだったんですか。
伊武:相手役が朝加真由美さんで、監督が小澤啓一さん。それが初めての主演映画でした。
林:テレビドラマでも、伊武さんが主役のものがあった気がしますけど。
伊武:BSのドラマでは主役をやっていますよ。このあいだは内田百間をやって、その前は森鴎外。そういうのは何本かあります。ただ、ゴールデンタイムではないですね。
林:最近、監督さんも年下ですか。
伊武:年下ですよ。
林:「なんでこんな撮り方をするんだろう」とか、「なんでこんな演出をするんだろう」とか思います?
伊武:でも、いい監督が出てきていますよ。以前「セーラー服と機関銃」のリメイク(「セーラー服と機関銃─卒業─」)を撮った前田弘二っていう監督も、若いけどいいんです。衣装合わせに行ったときにどの人が監督なんだろうと思ったら、助監督よりかなり若く見える方が「こんにちは。監督です」って言うから驚きました。でも、たまたまかもしれないけど、今まで「これダメだ」という若手の監督はいませんでした。