「お巡りさんに聞けば道を教えてくれる」と考えるのが結果予測だ。だが、これだけでは行動には移しにくい。その国の言葉や英語が話せるという見通し(確信)が強くなければ、いくら結果がわかっていても、行動できないからだ。つまり、「自分は、外国語でお巡りさんに道を聞くことができる」という効力予測が、行動には必要なのだ。

 ストレスになるような状況でも、「自分にはできる」という自己効力感が高ければ、効力予測が立ちやすく、うまく振る舞えたり、乗り越えられたりできる。その積み重ねでストレスそのものを感じにくい“体質”になっていくわけだ。

 では、どうしたら自己効力感を高めることができるのか。前出の坂野さんと、働く人のメンタルヘルスに詳しい筑波大学大学院人間総合科学研究科教授の水上勝義さんに聞いた。押さえておきたいポイントは、「成功体験を持つ(遂行行動の達成)」「周りの人を観察する(代理的経験)」「言葉による説得を受ける(言語的説得)」「体の生理的な反応を知る(情動的喚起)」の四つだ。

1.成功体験を持つ 「うまくいった」「達成できた」という自らの体験で、自己効力感を高める最も良い方法とされている。大事なのは「どのようにうまくいったのか」を振り返って分析すること。そのノウハウが蓄積されることで、課題を克服できる力がつき、さらに成功体験が増える。
「成功体験を得るためには、目標を作ることが必要。目標は大きなものではなく、短期的で容易に達成できるものでかまいません。成功体験の積み重ねが、大事なのです」(水上さん)

 反対に、失敗体験は自己効力感を下げる要因になりやすい。だが、こちらも考え方次第だ。「失敗は成功の元」と捉え、原因の分析やどう工夫すれば成功したかを振り返ることで、次は失敗しないという確信が持て、自己効力感が高まる。

 もちろん、一人で悩まず、周りの意見を聞き、サポートを得ることも大事だ。

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