作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。北原氏は、安倍昭恵夫人が以前飲食店の経営を始めたころの言動を振り返る。
* * *
安倍昭恵さんは2012年に居酒屋を開店したときに、夫と銀行からお金を借りたのだという。13年、新潮45のインタビューで、こう話している。
「銀行からお金を借りるのをすごく甘く考えていました。『安倍晋三の家内です』と言ったら『はい、どうぞ』みたいな感じで貸してくれるかなと思ってたんですが(笑)」
銀行は、昭恵さんに事業計画を求めたという(当たり前)。このとき昭恵さんは慣れない書類仕事をこなし、面接をし、「いろいろな手続きをしなくてはお金って借りられないんだな、と初めて知りました」そうだ。まぁ、常識がなくても生きていける階級に昭恵さんはいたのだろうし、実際「安倍晋三の家内です」と言えば簡単に開く扉を、いくつも通ってきたのだろう。その結果が、今回のアッキード事件だ。
昭恵さんは「主人からも借金をしている」と言っている。そのことが、あとからじわじわと気になっている。いくら借りたか、または本当なのかすら分からないが、少なくとも「安倍晋三の家内」が名刺だった昭恵さんは、本当の意味で自分一人で決断し、自由に動かせるお金を持ったことがなかったのは事実だろう。インタビューでは昭恵さんが夫に「仕事したい、店をやりたい」と告げる日のことが、なまなましく描かれている。
「河口湖に行って、たまたま二人きりになるときがあったので『ちょっと今晩、重要な話があるんだけど』と言ってみました」
この夫婦が日常生活では「二人きり」になることがあまりないのが伝わってくる。夜になって妻が真剣な顔で「ちょっと座ってくれないかな」と夫に言うと、普段、そんな会話などない夫がドキドキしているのが伝わったという。それはエロス的なドキドキではもちろんなく、「妻がどんな話をするのか全く予想がつかない」怖さだったようだ。
それにしても昭恵さんの言葉は、何を読んでも、かなり空虚だ。年季の入った空虚ほど、闇が深く破壊力のあるものはない。この破壊力をもって安倍政権を倒せるよう、私は「祈ります」。
※週刊朝日 2017年4月28日号