歩行と関連があるのは認知症に限らない(※写真はイメージ)
歩行と関連があるのは認知症に限らない(※写真はイメージ)

 年を重ねるごとに不安が募る認知症や生活習慣病。ゆっくり歩きと大股での速歩を繰り返す“インターバル速歩”は、認知症リスクを減らすだけでなく、うつや生活習慣病の予防につながることがわかった。

 歩行と関連があるのは認知症に限らない。速歩をすると血糖値や血圧、コレステロール値などが下がる。そんなエビデンスも出ているのだ。

 本誌でも昨年10月21日号の記事で筋力をアップする「正しい歩き方」として取り上げた「インターバル速歩」も、その一つ。5カ月間で10歳以上若返るほどの成果を得られるという研究結果が出ている。

 この速歩の効果を調べる研究が行われたのは、長野県松本市。同市では信州大学が参画して高齢者の運動教室「熟年体育大学」を開催している。参加者(男性198人、女性468人)を体力別に「低」「中」「高」に分け、インターバル速歩を続けてもらった。

 結果を開始前と5カ月後で比べたところ、5カ月後のほうが体力がつき、生活習慣病指標が大きく改善していた。しかも体力が「低」の群のほうで改善度が高かった。なお、生活習慣病指標とは血圧、空腹時血糖値、BMI(ボディー・マス・インデックス:肥満度を示す指標)、中性脂肪(またはHDLコレステロール)の4項目の診断基準をもとに、基準値を超えた(HDLコレステロールは基準値を下回った)項目について1点ずつ加算したもの。すべて該当すれば4点になる。点数が低いほど健康、高いほど不健康という指標だ。

 さらに熟年体育大学の参加者約4千人分のデータを用いた別の研究では、5カ月間で持久力(心肺機能)や筋力が最大で20%アップし、生活習慣病の症状も20%改善。老年期うつやがんなどの予防効果も期待できたという。

 通常は、30歳以降は加齢によって10歳で5~10%ずつ体力は低下する。こうした研究から、速歩で「10歳以上若返る」ことが示されたわけだ。調査研究にあたった信州大学大学院医学系研究科教授の能勢博さんは、「健診で“問題アリ”と指摘されたら、病院を受診する前にまずはインターバル速歩を試してほしい」と呼びかける。

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