今後の起用法に悩むことだろう… (c)朝日新聞社
今後の起用法に悩むことだろう… (c)朝日新聞社
この記事の写真をすべて見る

 サッカー日本代表がW杯アジア最終予選で、敵地でUAEに2−0と勝利した。

 UAEは昨年9月に最終予選の初戦で、ホームで敗れた相手。リベンジはもちろん、負ければ予選突破に黄信号がともる意味でも負けられない試合だった。

 その大事な一戦を前に、注目されたのはこれまでエースとして君臨してきたFW本田圭佑(30)の起用法である。昨年11月に1度先発落ちを経験している本田だが、状況は悪くなる一方で、今予選の前にはメンバー入りさえ疑問視する声もあったほど。所属するACミラン(イタリア)で今年に入って出場したのは、わずか1試合3分間のみ。その“エース”を先発させるかどうか、ハリルホジッチ監督の答えは「NO」だった。

 本田に代わって右FWで先発した久保裕也(23)は14分に先制ゴールを挙げるなど全2得点に絡む活躍。久保は今冬にスイスからベルギーのヘントに活躍の場を移すと、リーグ7戦5ゴールと絶好調。78分に本田と代わってピッチを去ったが、コンディションの良さは際立っていた。

 久保は試合後、今後についてこう抱負を述べた。

「代表の中では若手だし、アグレッシブにやっていきたい。僕らの世代が(本田らベテランらを)脅かす姿勢でやらないといけない」

 一方の本田は無言を貫いたが、この試合が新旧世代交代を決定づけることになったとしてもおかしくはない。

 試合の直前には主将のMF長谷部誠(33)が右ひざのケガで離脱したが、その穴を約2年ぶりに代表復帰した今野泰幸(34)が持ち味の守備だけでなく、ゴールも決めるなど出色のプレーで見事に埋めた。GKに西川周作(30)ではなく川島永嗣(34)を起用したことには驚きの声も上がったが、前半にあった決定的な危機を川島の好守で免れるなど、指揮官の起用法がさえわたった試合とも言えた。

 だが、久保と異なり、今野と川島はチーム最年長の2人だ。今野は自身のプレーについて真顔で「たまたま」と語ったが、それは謙遜ではなく本心からだろう。ベテランの奮闘でUAEに借りを返し、W杯出場に一歩前進したことは間違いないが、この勝利が今後にどこまでつながるかは未知数。“ハリル采配ズバリ”と手放しで喜んでばかりはいられない現実もある。

週刊朝日 2017年4月7日号