「秀康は三成と親交があり、秀康は三成のことを兄・信康と重ね合わせて見ていたようです。単に刀をもらった以上の感情があったはずです」と石田三成の15代目の子孫・石田秀雄さん。
「石田正宗」は実戦力と機能美、あるいは芸術性と強靭性が見事に融合している点が独創的だ。鎌倉期独特の多様な刃紋の美しさは刀剣美の極致、と言っていい。
「実は石田家には前田大名家から賜った刀が昭和20年8月まであったんです。しかし、空襲で焼失してしまいました。私は直接見たことはないのですが、名刀だったことは間違いありません」(同)
新潟・妙高にあった石田家は東京・八王子に転居。その際に前田公からの刀をはじめ石田家伝来の文物を同時に移していたのだ。
三成は武将ではあるが、刀剣を持って積極的に戦うタイプではなく、刀についてもあまり執着がなかったのではと石田さんは話す。
「前田大名家から賜った刀がなくなったのが残念ですが、平和を願った三成のことを考えると、刀が必要ない世の中をきっと望んでいたはずです」(同)(ライター・植草信和、本誌・鮎川哲也)
※週刊朝日 2017年2月3日号