「敗れたのは、リベラル派だけではない。トランプはある種の反動ですが、保守派ではない。保守派の茶会党(ティーパーティー)系のライアン下院議長からも毛嫌いされ、共和党主流派は緊張関係のまま彼を迎え入れた。メディアも読者や視聴者からの反感が強く、権力を十分監視できていない。トランプにすり寄るメディアさえ出てきます」

 トランプ氏が暴言を封印しない場合、暴走を止める適役は世論や対抗勢力のはず。しかし、リベラル派やメディアは力を失ったままだ。

 同志社大大学院の浜矩子教授は「口は災いの元で、為替戦争どころか、本当の戦争さえ起きかねません」と予言する。

「ドル高がまずいぞ、とトランプは最近あたふたしています。中国が為替操作しているとか、円が安すぎるなどと支離滅裂。今のドル高は公共投資と大幅減税策を打ち出した自分のせい。これから打撃を受ける可能性のある白人労働者の怒りが自分へ向くことに、ひるみ始めた。本当に怖いのは、弱虫の突っ張りです」

 けんかで“勝利”を続けたが、今後“負け”がこんだらどうなるか。国民の怒りをかわす手段は限られる。

「仮想敵をつくって怒りをかわし、政権延命を図る。最悪の手段です。あいつが悪い、やっつけろと言い、世界を怒らす。本気になった国との間で戦争になるかもしれません」(浜教授)

 けんか上手で核のボタンを押す地位についた過激な新大統領。この先、「血迷いパンデミック(感染爆発)で世界が炎上する」(同)との見立ては当たってほしくない。

週刊朝日  2017年2月3日号