偕楽園(水戸市)は日本三名園、袋田の滝(大子町)は日本三名瀑、土浦全国花火競技大会は日本三大花火大会にそれぞれ数えられ、見どころは数多いのだ。

 県内随一の老舗料亭「山口楼」(水戸市など)の客層の8割は県外から。専務の山口晃平氏は語る。

「なまじ東京から近いので、北海道や京都のような観光地としてのイメージ付けの資本投下をJR東日本などの民間大手がしないので、茨城のPRができてなかった。しかし、ヤンキーでも一つの文化といっていいし、キツイ訛りも個性です。自然、食べ物、観光など住んでみないと良さはわからないのではないか」

 茨城弁普及運動に励む傍ら、『いばらぎじゃなくていばらき』などの著作がある青木智也氏はこう胸を張った。

「以前は県民自身が茨城で生まれ育っていく中で、東京にはかなわない、脇役なんだという意識があった。しかし、だんだんとそうじゃないんだという理解が進み、そこそこ、ほどほどで田舎すぎず、都会すぎないちょうどいいバランスの県という意識、誇りが高まってきた」と指摘し、「車も走りやすいし、家も広い、雪も降らない。スキー場以外は何でもある。僕は勝手に都田舎(とかいなか)と呼んでます。ピンチをチャンスにしたい。本当の魅力を発信したいですね」。

 4月からは追い風も吹く。次期NHK連続テレビ小説「ひよっこ」の舞台が茨城県北西部で、ヒロイン役の人気女優、有村架純が思いっきり、「んだんだ」(そうだという意味)という茨城弁をテレビ画面から連発する。

 前出の取出氏は茨城県の立ち位置をこう語る。

「いつか行ってみたい銀座レカン(銀座のフレンチレストラン)ではなく、茨城は町の普段使っている定食屋さんのイメージでいい。SMAPの『世界に一つだけの花』にあるように、あえてナンバーワンを目指さなくていいんです」

 前出の青木氏もブレークへの期待をこう語る。

「『いい、やんべ』という茨城弁が好きなんです。いいあんばいという意味。茨城はそこそこ、ちょうどいい住み心地のいい場所です。ポテンシャルはすごくあると思う。近いうち、きっと大ブレークしますよ」

 長時間労働で自殺に追い込まれるような殺伐とした大都会とは一味違う茨城の魅力が新発見される日は近いかも?(本誌・村上新太郎)

週刊朝日  2017年1月27日号