57歳の土地家屋調査士で参加4回目の4番男性は20年前に離婚。その後、つき合った女性はがんで亡くなった。不幸話を皆が真顔で聞いて暗くなったので、4番男性があわてて「飲みましょう!」と、明るくビールを注文した。注がれるままハイピッチで飲むのは、3年前に離婚した46歳のキュートな2番女性だ。半年前、再婚希望でこのツアーに初参加してカップルになったが、進展しなかったという。
午後6時半。地蔵川に沿って加茂神社までの800メートルを往復する。水中で白い花を咲かせる梅花藻(ばいかも)を、皆が感激して眺めている。やがてカップル歩きへと変わっていった。
53歳、自営業の明るい7番女性が一人で歩いているので、お目当ての男性を尋ねてみると、手の指を少しだけ上げて「目の前」と答えた。すぐ前を青いストライプシャツを着た57歳の会社員2番男性と、12年前に浮気をされて離婚した53歳の事務職8番女性が歩いていた。
「1カ月前に、ツアーで出会った59歳の郵便局員と居酒屋へ行ったんだけど、帰り道に『合わないみたいだね』って、一方的に言われて……。一度は結婚したいけど、なかなか友達以上に進まないんです」
寂しそうな笑みを一瞬だけ私に向けた。そこで私は、7番女性のために8番女性に気持ちを尋ねた。
「結婚よりも、一緒に大好きな花を見に行ったりしたいんですね。でも2番の人は、車を持っていないそうで、それが困った……」
背中に痛い視線を感じてふり返ると2番男性がくっついて歩いていた。
51歳3番女性と50歳4番女性は、オフィス街・淀屋橋にある大手銀行勤務の友人で、二人で行動していた。
「下から優秀な人がどんどん入ってくるし、資産運用の営業はしんどいし、早く結婚したいけど、男性銀行員は結婚が早いんです」
2人ともきれいでスタイルも良く、いかにもОL風だ。なのに銀行員という看板だけで男は敬遠してしまうのだろうか。
午後7時10分。バスに戻ると、ここからは自由席で、興味ある人の横に座れる。寂しげに座っていたのは、あの明るい7番女性と、見かけがおじいちゃんすぎる66歳、半年で7回参加の3番男性だった。20分後、最終地グリーンパーク山東に到着した。雨が降りだしたが、観光客であふれた、源氏蛍が光るように灯の消えた道を行く。チャラい6番男性が、私の前を一人で歩いていた。