「ソフトクリーム買ってやり」
2番男性の近くを歩いていた女性を気遣って、けしかけている。
「ポツンとされる方がいないように『一人一歩前に出て頑張りなさい』ってお尻をたたくんです。大阪の人は『仲をちゃんと取り持ってくれや』とか、ズカズカ言ってきます。『しっかりせぇ! どこがあかんねん』って、言ってやりますけどね」
小柴さんは、そう言って笑い飛ばした。ちなみに東京と名古屋の男女はクレームをつけず、嫌なら次回から来ないそうだ。
午後4時半。バスが出発する前に席替えが行われた。
ヒマワリ柄の綿シャツに白いパンツをはき、日焼けした6番男性は、見るからに遊び人風で目立っているが、4回目の参加でも、いまだ「つき合う」まで行けた女性はいない。
「遊び人でしょう?ってよく言われるけど、アルコールが飲めないんだよね。25年前に離婚して、結婚までは望んでいない。ツアーには遊びに来てるようなもの」
と、言い訳しながら白い歯をのぞかせる。夜遊ぶための若いお姉ちゃんは間に合っていそうだが、本命に出逢(であ)えない。8番男性のように過剰なほど真剣ではなく、6番男性のようにチャラすぎず、いわゆる“普通”が婚活ツアーでは人気らしい。
約15分で「醒井水(みず)の宿(やど)駅」に到着した。多目的ホールを借りて残りの人と「お見合い回転ずし」が始まる。椅子が2列に8脚ずつ並べられる。「面接みたい」と皆が笑っていたが、にこやかにかつ熱を帯びながら、すぐに話を始めた。
午後5時半。40分かけてお見合いが終わると、階下の「おふくろバイキングみゆき」で夕食が始まる。一つのテーブルに6人ずつ狭そうに座るのだが、会話が弾むための作戦らしい。追加料金で男性たちが同じテーブルの女性にビールを注文する。暗黙のうちに男性たちが割り勘で支払う太っ腹さが、大阪人らしい。
「デパートに勤める45歳の女と半月前に別れたとこ。ボッテガの財布とか色々プレゼントしちまったけど、一緒に旅行する気がなくなったとメールが来て、それっきり……」