来年1月16日に発表される野球殿堂の候補者の中で、原辰徳氏と中畑清氏が名を連ねた。西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、「2人にはぜひ、日本代表の金メダル獲得に関わってほしい」と望む。

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 11月30日に巨人の斎藤雅樹2軍監督、12月2日に山中正竹氏、それぞれの野球殿堂入りを祝う会が都内で行われた。野球殿堂は野球人にとって、最高の栄誉でもある。

 私も2010年12月に野球殿堂入りパーティーを都内のホテルで開いていただいた。山本浩二さんほか、いろんな方々にお祝いの言葉をもらった。自分のスピーチでは、用意していたフレーズが頭から飛んで真っ白になったことを今でも覚えている。当時の新聞には「感謝感激です……。ここまで来られたのは仲間のおかげ。感謝しています。監督でも(松坂)大輔、(松井)稼頭央……頑張ってくれた仲間に感謝です」とのコメントが載った。自分の野球人生が、多くの方々に支えられてきたことを改めて実感したし、それほどうれしい瞬間だった。

 来年の野球殿堂入りの候補者も発表された。西武時代に同僚であり、監督と選手の関係でもあった清原和博が候補者から除外されたが、犯した罪を考えれば、当たり前の判断である。再び候補者に名を連ねるということも、難しいことは誰もがわかっている。ただ、清原本人のこれから歩む人生まで奪うものではない。ここから先、少しずつでも更生の道を歩んでもらいたい。そして、世間に許され、野球に恩返しをする時が来ることを信じて待ちたいと思う。

 
 話を戻すが、来年1月16日に発表される野球殿堂の候補者の中で、エキスパート部門に原辰徳が名を連ねた。巨人の監督としての実績はもちろん、09年の第2回WBCの優勝監督だ。プレーヤー表彰では残念ながら、あと一歩届かなかったが、指導者としての実績は群を抜いている。そして、中畑清も候補者に入った。DeNAの今年のクライマックスシリーズ進出の土台を築き、そして明るいキャラクターで野球界を盛り上げた功績は計り知れない。04年のアテネ五輪では、脳梗塞(こうそく)で倒れた長嶋茂雄監督に代わり、ヘッド兼打撃コーチとしてチームを率いた。どんな難局でも、野球界のために尽力してきた姿は頭が下がる思いだ。

 20年の東京五輪では野球の金メダルを目指して戦う。原、中畑の2人にはぜひ、日本代表の金メダル獲得に関わってほしいよね。特に福島でも試合が行われるのであれば、福島出身の中畑には、うってつけのような感じがする。しかも、アテネ五輪の時に果たせなかった金メダルを長嶋さんに見せる、という目標があるのもドラマ性を感じるよね。完全に無責任な形で話を進めてしまっているけど、原、中畑の両氏が代表監督としての資格、実績があると誰もが感じていると思う。あとはどれだけ代表監督をサポートする体制を整えられるかも大事。重責を担う監督を絶対に孤立させてはいけない。

 本当にうらやましいよ。東京で行われる五輪に出場できる選手は、その時代に生きていなければ入ることもできない「運」も持っている。プロの大会、アマの大会という議論は置いておいて、五輪戦士としてプレーする栄誉は本当に一握りの人間だけだ。若い選手は絶対に目指してほしいし、球界に携わる人間は全力でサポートしていかなきゃいけない。

 代表監督の選定も、過去の代表監督全員で集まって話し合うくらい、議論を尽くしていいと思うよね。

週刊朝日  2016年12月16日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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