漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、「獄門島」(NHK BSプレミアム 11月19日20:00~)を取り上げ、主人公である金田一耕助の狂気に注目した。
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荒波に浮かぶ黒い島影。鳴り響くロックは、マリリン・マンソン。かつてNHKで、早朝「明るい農村」という番組をやっていた。冷害で実らぬ稲を、悲しい目でみつめる老婆。そのバックに流れていたのは、ジェフ・ベックの冴えわたるギターの音色だった。「農村」&ジェフ・ベックがありなら、「獄門島」&マリリン・マンソンになんの違和感もなしですわ。
金田一耕助といえば、市川崑作品の石坂浩二。飄々としながらも切れ者の印象。ドラマの古谷一行版は、ちょいエロ(本人イメージ)な人情派。そして今回の長谷川博己、略してハセヒロ版は、金田一史上屈指の情緒不安定耕助だった。
無残にも美しい連続殺人事件の被害者は、鬼頭家三姉妹、月代、雪枝、花子だ。華やかな振り袖をまとい、けたたましい嬌声をあげる彼女たち。映画だと、出て来た瞬間から「クレイジー」と納得だけど、今回はどうでしょう。花盛りの頭&ビビッドカラーの振り袖って、これ、きゃりーぱみゅぱみゅ風っていうか、普通に最近の成人式。キャッキャ騒ぎ、握り箸でご飯かっ込む姿も、そのまんまギャル。昭和の色濃い時代には、クレイジーに見えた三姉妹も、平成ではノーマルギャルだという事実に戦慄だ。
「果たさなくていい約束を必死に果たして無駄無駄無駄無駄ァ、無意味ー! ご苦労様でした、ザマァみろだっ!」って、この言葉責めに耐え切れず、和尚いきなり心臓停止。何気に人殺しだよ、金田一。その金田一も高笑いMAXで、バターンと倒れて号泣。ちょっと誰か、この島にお医者様はいらっしゃいませんかー! 獄門島にみなぎる闇と呪い、一族に連なる業の深さ、鬼頭家の三姉妹、そして放送コード。そのすべてを超えるハセヒロ金田一の狂気。もう視聴者全員がつぶやいたはず。「き(季)ちがいじゃが、しかたがない」
※週刊朝日 2016年12月9日号