地震で水面が揺れるのは当然。いままで対策をしてこなかったのが不思議だが、実は今回の地震でトラブルはこれだけではなかった。福島第一原発と第二原発で合計5カ所の異常が発生していたのだ。

(1)使用済み燃料プールの冷却機能の停止、(2)ダストモニタリングが停電で一時停止(それぞれ第二原発)、(3)港湾内の海水放射線モニターが停止、(4)共用プール建屋でスロッシングが起き、6平方メートルの水たまりができた、(5)1~6号機の海洋への汚染物質流出防止のためのシルトフェンスが損傷(それぞれ第一原発)。

 震度5弱でこれだけの不具合が出ていたら、今後も来ることが予想されるさらに大きな余震で、原発に深刻な被害が生じるのではないか。元東芝技術者で原子炉格納容器設計に携わった後藤政志氏は、東電には十分な備えができていないという。

「使用済み燃料プールのような大きなものは地震で相当揺れるから、今回の事態も予想できたはず。それなのにいままで何もせず、さらに冷却ができなくなってもルール上の制限温度に達するまで約7日間あるから大丈夫というのは言い訳にしか聞こえません」

 2013年にも福島第一原発の使用済み燃料プールが冷却不能になるトラブルが起きた。

「あの時はネズミが配電盤に入り込みショートしたことで全面的な復旧まで29時間かかりました。原因の特定までに時間がかかれば7日間などすぐに過ぎてしまう。大地震ではいろんなことが起きるという5年前の教訓を生かさないと、また同じ事故が起きます」

 もともと原発事故は起きないとの前提で進んだのが日本の政策だった。福島第一原発事故の2年前、当時の原子力安全・保安院がまとめた複合災害下での原子力防災の検討文書にはこう記されていた。

<原子力施設においては、想定される最も厳しい地震等に対しても安全が確保されるよう、十分な災害対策が講じられており、大規模自然災害を原因とした原子力災害等が、現実に発生する蓋然性は極めて低い>

 だが、それは絵空事で、日本中をパニックに追い込むほどの大惨事となったのは承知の通りだ。安倍首相は「世界で最も厳しい安全基準にパスした原発を再稼働させる」として川内、伊方両原発を再稼働させたが、再び甘い安全神話ができつつあるのではないか。

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