「在日米軍撤退もありうると公言したトランプ大統領の誕生に沖縄の方々は期待するだろうなと思いました」
東京に戻って安倍晋三首相ら閣僚の感触を探った小野寺氏は、こう振り返る。
「首相はとまどっている感じでしたが、決まった直後、すぐにトランプ氏本人と連絡を取り、17日に面会の約束をとれた。裏では、もともとパイプがあったからです」
トランプ氏は連日、メディアから攻撃される最中でも勝利を予想していたようで、実に用意周到だった。約1カ月前、側近で起用が確実視されているマイケル・フリン氏が来日。自民党幹部、菅義偉官房長官ら政府関係者と面会している。フリン氏は2012~14年、国防情報局(DIA)長官を務めたが、オバマ大統領とうまくいかず、退任させられた後、トランプ氏の政策アドバイザーとなった人物だ。
「防衛相時代、何回もフリン氏と会っていますが、日米同盟、在日米軍基地の問題はよくわかっており、安心していい。トランプ氏は未知数です……」(小野寺氏)
小池氏も用意周到だった。都庁に乗り込むと、石原慎太郎都政の豊洲市場の盛り土問題、五輪問題など次々と暴いた。ポピュリストを演じながら緻密な計算ができるという点でも両者は似通っている。
メディア、専門家の予想が見事に外れたという点も一致する。
米大統領選では米国の主要メディアは軒並み反トランプの論陣を張り、最後まで民主党のヒラリー・クリントン候補が有利と予測していた。一方の小池氏の場合も、自民党が増田寛也候補を推薦したことで小池氏との分裂選挙となり、民進党、共産党など野党が一本化して推薦した鳥越俊太郎候補が有利と見る論調がメディアの多数を占めていた。政治ジャーナリストの角谷浩一氏がこう語る。
「メディアや専門家が『長年の経験からすると次はこうなる』と考えるセオリーが、通用しなくなっている。日本の場合、中央はともかく地方政治の腐敗に対して有権者の危機感は思った以上に高まっていて、それが小池氏の予想外の勝利につながった。既存の政治家では変えられないから、トランプ氏や小池氏のような少し変わったタイプに試しにやらせてみようという選択が働いているわけで、独裁者を待望しているわけではない。支配層のしがらみの破壊を望んでいるのです」